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7月13日(土) 曇り時々晴れ、風なし 閑話休題 《 セブ島南部の船の造り方 》
  フィリピンは7000以上の島からなる群島国家であり、その内4000ほどの島に人間が住んでいると言われている。当然、島から島へ渡る船は重要な交通機関であり、大小の船が使われている。

 大は
1万トンものフェリーボートから様々だが、こういった船は日本の中古船がほとんどで、乗船してみると、日本語の案内板がそのまま壁に残っていたりして懐かしい気もする。

 1
万トンものフェリーは日本のCMで一世を風靡した船だったが、フィリピンに売られて就航して間もなく台風で沈没、たくさんの人命が奪われた事件もあった。

 小の方ではこれは地元の人間が浜辺で作る『バンカ・ボート』が代表的で、両舷にアウト・リガーを出しているために細身の割には安定性は良い。

 写真はこの間訪れたセブ島南部で見かけた造船の様子で、この船はジンベイザメを見物する観光客用に作られている。

 普通に見られる、漁に使われる船は船底から舷までは浅いのが普通で、写真の船はかなり深い。これは観光客が中で立ち上がってもバランスを崩させないように考えて作られているようだ。

 また、左右を繋ぐビーム(横の部材)に
2人が腰かけられるように幅広く作られているのが特徴で、この船に観光客89人が乗って、前後に漕ぎ手が23人乗る。

 船底が平らなのはスピードを重視せず、乗客の足を置きやすい様にしたためだろうが、隣りで造っている裏返しの船を見ると船底にビームが通っていないので強度はどうかと思うが、沖合
150メートル程度の水面専用、荒い海域で使うわけではないのでそこまでの強度は必要ないのだろう。

 船の材料はマリン合板と硬い木を使っているが、マリン合板と称してもフィリピンはいわゆる耐水合板タイプ気里海箸如∨寨茲老築、家具に使用される材料だが長い耐久性を求められるわけではないから良いのだろう。

 全体の造りは綺麗に造ってあって手慣れているのが分かり、ジンベイザメ景気で今の所は作っても作っても追い付かない状況なのだろう。写真の状態はパテ埋めも終わっていて塗装に入る直前の状態で、右奥ではローラーで塗装を始めている様子が写っている。

 昔、ヨットを作ったことがあって、その時は設計図だ、実寸図だ、材料だと難しい作業と準備はたくさんあったが、フィリピンでこのように造っている船の場合、主要材料は山から切り出し、何枚かの合板と接着剤、釘、塗料があれば出来るからこちらが思うほど難しくないのかも知れない。

 写真の船の建造価格は分からないが、地方の海岸の椰子の木陰でなどでのんびり工作している人に聞くと、小さいバンカ・ボートなら日本円で
10万円も出せば作ってくれるようなことを言っていた。

 そういう土地に伝わる造船技術というのは馬鹿にしてはいけなく、
1969年、世界で初めてヨットで単独無寄港世界一周記録を作ったロビン・ノックス・ジョンストンの『スハイリ号=32フィート・ケッチ』は建造価格の安いインド・ボンベイで造っている。


author:cebushima, category:閑話休題2013年7月, 18:22
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7月12日(金) 曇り、風なし 閑話休題 《 セブの隠れた景勝地と言うと平凡になるが 》
 セブの海岸線を縫う一周道路を回ると約500キロあるから、セブ島は小さい島のようで結構大きく、セブにはかれこれ四半世紀近く住んではいるが知らない所はたくさんある。

 セブは海のリゾートとして有名でどこもかしこも海岸だらけのようだが、島の地形はむしろ山岳地帯がほとんどで、平野は少ない。特に南部方面は海岸から標高
1000メートル以上の山が海岸から立ち上がっているので、相当険しい山並みを連ねる。

 この間『ジンベイザメ』見物の事を書いたが、この地域の渓谷に写真の滝がある。

 ジンベイザメ見物は
1時間位で終わってしまうから、見終わった観光客は手持ち無沙汰になり、活動的な観光客は近隣の名所に繰り出すが、その一つが『TUMALOG』の滝で、他には温泉もあった。

 滝の方はジンベイザメ見物の海岸から急な山道をしばらく車で上って行き、ほぼ台地の頂上に近くなる途中から谷に向かって降りて行くとこの滝にぶつかる。

 谷に降りて行く道は車は通れるが、山道の分岐点で車はストップされ、ここは関所と同じで入場料をチャッカリ徴収している。

 急な下り坂は歩いても
20分もかからないが、この分岐点から滝までバイクに乗せて行く商売連中が待ち構えていて、『急で遠いよ』の文句にビビッて乗る人は結構多い。

 道を作るのに大変だったなと思う結構な切通しで炎天下ではバイクも良い商売をしていて、特に帰りの上りコースは料金も割増しになっているが、急坂歩きを嫌がって乗って帰る人も多い。

 ここは滝とは言うが、写真を見ても分かるように
40メートル位の谷の縁で、レースの様な水が各所で下に落ちている。セブ島南部の反対岸にはセブで最大の『カワサン』滝があって、そちらは水量も豊かで滝壺も並々として泳げていかにも滝らしい風情を持つ。

 ここの滝は一年中こういう感じかどうか分からないが、雨季の水量の多い時はまた様子が違うかも知れず、水を受ける地層は水に含まれる石灰質が長い間に堆積したのか覆いかぶさるように成長し、鍾乳洞と同じ原理で景観を作っている。

 涼しさと共になかなか心の休まる区域で、座って水の落ちる様を見ているだけでも飽きず、瞑想するには最適、今風に言えば『パワースポット』的な作用があるのかも知れない。

 観光客も水の落ちる下で思い思いのポーズで写真を撮る人も多く、海から直接来たのか水着姿の人も居て場違いな感じもするが一通り写真を撮るとすぐに帰るから、写真を撮るのが目的でここで落ち着いて鑑賞、瞑想しようなどとは考えないようだ。

 その水着姿だがかつてのフィリピン人女性は水着の上から
Tシャツを羽織って水着を着ること自体を恥ずかしがったものだが、今はビキニでも何でも平気の平左で闊歩し、時代が変われば変わるものだと思わせた。もっとも、日本だって水着がワンピースからセパレートになってビキニになるにはあっと言う間の時間だったからとやかく言う程のものではないが。

 また訪れたい場所だったが、気になるのはこの水の流れてくる上の様子で、集落があるようでそうだとしたら生活排水も流れ込んでいる訳で、思うほど清涼な水ではなく、などとはやはり考えない方が良いだろう。


 
author:cebushima, category:閑話休題2013年7月, 19:30
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7月11日(木) 曇りのち雨、時々雷鳴、風なし 閑話休題 《 古川日出男 『サウンドトラック』 》
 この作家の本は初めて読んだ。何に引かれてこの本を選んだかは良く分からないが、いつものように105円ショップで手当たり次第に買い込んだ時の物で、題名と表紙のイラストから、最近流行りの『ライト・ノヴェル』と称する中味のない内容と思い、長らく忘れられたように積まれていた。

 そろそろ読むべき本がなくなってきたので仕方がなく読み出したが、上下に別れた大冊ながら案外とスラスラ読み終えた。

 読後感は『何だこれは』という代物だが、部分部分では筆力も確かで作者に興味を持って調べたら、
1966年生まれの47歳。

 本業は舞台演出家だったらしいが、道理で作中で『踊る』ことに関して執拗な記述があったのも舞台と関係があったのだろうし、題名の付け方といい、場面転換の方法など舞台の手法を取り入れていて、文中で分かりにくいストーリーの繋がり方も納得した。

 作家としては
2002年に『アラビアの夜の種族』で、日本推理作家協会賞と日本SF大賞を受賞しているし、2006年には『LOVE』で三島由紀夫賞を受章しているから力はあるようだ。

 この作者の年齢は
47歳と上述したが、三島由紀夫が19701125日、市ヶ谷の自衛隊駐屯地で割腹自殺をした時は45歳の時だったから、やはり早過ぎた死と、今更ながら驚く。三島が今も生きていたら88歳の米寿を迎えている年齢で、まだ作品を書いていられたか分からないが、日本文学の損失だったのは間違いない。

 話は飛ぶが、三島事件は確か学校から帰って来て付けたテレビでその事件を知ったと記憶するが、三島の自殺には驚かなかったが、翌日の新聞だか週刊誌に載った割腹現場に、三島の首が転がっている写真を見てようやく実感された。

 さて本書に戻るが、この本は
2003年に発刊されているが、『トウタ』と『ヒツジコ』という数奇な身の上で育った男女2人を軸にした近未来小説で、2000年代に東京は移民に占拠され、天候異変で熱帯地域の様な気候となり、熱帯病の蔓延、傾斜人と名付けられた謎の地底人、カラスやらさまざまな登場人物によって入り乱れて記述されているが、その中心舞台は東京・神楽坂と西荻窪となっているから何ともおかしい。

 神楽坂は確かに都心では妙な雰囲気を持つが、その近在を含めてこれを小説の舞台にしてしまうとは確かに
SF物である。作者は続編を書くつもりなのか、この本は結末がない状態で終わっていて、構成の大仰さからどこに転がって行くか分からない面白さはあったが肩すかし、というより作者の一人合点、納得ストーリーに読者は付き会されてしまったというしかない。

 こういう作者だけにしか通じない世界の押し売り作品が増えているのも最近の傾向で、これは紙の本で読むのではなく、昨今流行の『電子媒体』向きのようだ。

author:cebushima, category:閑話休題2013年7月, 18:27
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