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フィリピン・よもやま帖 2019 その−(9) ギャンブル好きの国民に痛手 ロト取扱店の全面閉鎖

 ギャンブル好きの人間は国を問わずにどこにでもいるが、フィリピン人は特にギャンブル好きな国民性のようで、ギャンブルに関する話題に事欠かない。

【写真−1

 ギャンブル好きなのは子どもの時からで、小生がフィリピンに初めて来た当時、道端で小さな子どもがコインを投げ合って、その正確さで勝ち負けを決めている様子を見た時には驚かされた。

 祖母からお金を粗末に扱うといけないと教えられた小生には、こういう小さな時からコインを道に投げるなど考えられなく、フィリピンが万年貧乏国を出られないのはこういうお金を粗末にする所と関係があるのではと思ったほどである。

 大人の方は『闘鶏』が盛んで、地方に行くとその競技場が町外れにあり、近隣から集まったバイクや車が溢れるように駐車しているのでこの日は試合日だなとすぐに分かる。

 この闘鶏、スペイン植民地時代にスペインから伝わったものだが、闘う鶏の脚に鋭い刃物を付けて双方を戦わせて、手塩にかけた鶏が負けて死ぬと、その鶏はスープにして食べてしまうらしいから案外ドライでもある。

 この闘鶏には金が賭けられているから、その競技場の近くを通ると歓声が怒涛のように伝わって来て、その興奮度、熱狂度が分かるがし、相当の金が動いているようだ。

 さて、フィリピンには『Philippine Charity Sweepstakes Office
=PCSO』という国営のギャンブル組織があって、この組織は『LOTTO=ロト』と呼ばれるくじを全国で発売している。

 日本でいう『宝くじ』のような感じだが、このくじは数合わせで当たりを決めるもので、あらかじめ連番が印刷されている日本の宝くじとはかなり違い、ギャンブル性は高い。

 ロト形式は日本でもサッカー関連で始まっていて、運試しといえば聞こえは良いがかなりギャンブル性は強く、こういうものが日本で始まったことにも驚かされ、サッカー協会はこんなギャンブルに関係するなどおかしく思わないのだろうか。

 写真−1はパラワン島の観光地エル・ニドにあったそのロトを売る店の様子で、間口は2メートルもないが、こういった店が国内に2万店ほど営業をしているが、7月26日、PCSOに汚職が蔓延っているとして、ドゥテルテ大統領は閉鎖命令を出した。

 PCSOにはロト売り上げを通じて巨額な金が流れ込み、その人事は政府が決めているが、巨額な資金が利権の塊となって、軍、警察、政治屋などの有力者に渡っているとの疑惑は以前から高かった。

 フィリピンには『フェテン』と呼ばれるやはり数合わせの違法なギャンブルがあって、これを仕切っているのがその土地の政治屋やそれと結びつく警察、軍などの有力者でやはり巨額な金が闇から闇へ流れていた。

 実際、地方の有力政治家が胴元であると指摘はされても、摘発する側も胴元から金が流れているから一掃は難しく、汚職で終身刑を受けたエストラダ元大統領など、フエテンから上納される金を巡って仲間割れしたのが失脚のきっかけとまでいわれている。

 このフエテン撲滅を目指して始められたのが現在のロトになるが、その源は同じで地方のヤクザから中央政府がその利権を取り上げただけで、その本質は全く同根である。

 

【写真−2】


 ロトを扱う店はスーパーの中にもあって、写真−2はそのスーパーで写した当日のロトの当たりを発表したボードだが、ロトといってもその種類は色々あるようで、基本は4〜7つの番号を当てるようになっている。

 その番号は掛け金によって数字が大きくなるようで、当たりが出ないと掛け金が次へと上乗せさせられので、当選金はかなり高額になり、一回限りの宝くじとはかなり違い常習性は高い。

 時々ロトの当たりが出たとのニュースが流れ、その金額は1億ペソ(2億円強)を超え、日本の宝くじの一等賞に近いが日本とフィリピンの経済格差を考えると、日本で20億円を当てたような具合になりかなり巨額である。

【写真−3】

 それでロトにはどのくらいの金を賭けているかだが、写真−3はロト店の周りに落ちていたレシートで、それを見ると掛け金10ペソ、税金2ペソ計12ペソであることが分かり、この掛け金が高いか安いか分かりにくいが、貧乏人から掛け金を集めているのが良く分かる。

 このレシートの上に7つの数字が印字されていて、こういった方法ができるのもインターネットで全国津々浦々が繋がりパソコンで管理されている時代の賜物であると思われる。

 そういえばPCSOはインターネット・カジノの国内胴元でもあるが、このインターネット・カジノもPCSO以外に中国や韓国系の闇カジノが跋扈していて、入管は違法滞在を含めて従事する中国人、韓国人の摘発に躍起になっている。

 PCSOは入管、警察と手を組んで闇カジノ潰しに躍起になっているが、これなどどうも昔の賭場の権利を巡って争うヤクザの世界と根は同じに見える。

 大統領がロトの全店閉鎖命令を出し、この行方がどうなるのか分からないが、ロトの店を経営しているのは零細な個人が多く、その経済的打撃も大きく、既に違法のフエテンが復活するのではと見られ、この世界は底なしである。

 ギャンブルは酒や煙草と同じで依存性が高く、いわば病気と同じなので根絶することは難しく、幸せより不幸を呼ぶことが多い。


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2019, 20:23
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この一枚2019年 セブ篇 その(11) フィリピンの足 『トライシクル』

 トライシクルというのはオートバイに屋根付きの側車を付けた3輪車で、フィリピンでは重宝な足になっている。

【ひと乗り8ペソからあとは距離と場所によって支払う額は変わる】
 

 フィリピンに来て一番驚いたのは『歩かない』ことで、家から目と鼻の先の場所でもこのトライシクルに乗って行く人が多く、これも暑い日差しの下では歩くのが大義だからと理解はできるが、それにしても歩かない。

 写真を見ると分かるようにトライシクルの構造はオートバイが左側、側車は右側にありオートバイ側には運転手を含めて3人、側車には4〜5人は乗れる座席があり7〜8人くらいが乗れる。

 オートバイのエンジンは125ccが多く、これに側車と客の重量が加わり、総重量はいくらになるか分からないが、かなり重たくなっていることは確かで、急な坂道ではウンウンとエンジンを唸らせて走っている。

 7〜8人は乗ると書いたが、それは都市部など警察の目のある所であって、地方に行くと屋根の上に乗ったりして10人を超え、それプラス荷物を満載したトライシクルも珍しくない。

 このトライシクル、その鈍重な機能性のなさから都市部の大通りからは追い払われているが、大通りと大通りを結ぶ横丁などではまだ大活躍で需要も多いし、地方ではまだまだ交通の主力となっている。

 このトライシクル、地元にある小さな鉄工所でデザインし製作されているので、地域ごとにデザインは様々で、その違いだけでも目を楽しまさせ小生など地方へ行く都度に写真を撮っている。

 写真のトライシクルは標準的なスタイルだが、側車形式ではなく中央にオートバイを置いて箱型の客室を引っ張るタイプもあって、これなど車輪が4つあって正確には4輪車になる。

 また、法律的な制約があるのか、地域によっては客室には並んで2人しか乗れない構造のトライシクルもあって、1人いくらの運賃で運ぶトライシクルとしては稼げないタイプもある。


 先年、ルソン島北端を旅行した時、彼の地では側車は2人掛けで、しかもその屋根はかなり低く、頭を縮めて乗るような窮屈さを感じたが、ルソン島北端のバタネス諸島でも同じような作りで不思議な感じがした。

 トライシクルの運転は見ている限りは楽そうだが、一度広場で運転をさせてもらった時があり、意外に真っ直ぐ走らせることは難しく、曲がる時もハンドルは重くかなり要領が必要であった。

 フィリピン全土にトライシクルが何台あるのか統計的に出ていないが、アジア開発銀行によると2014年では350万台と推定されているから。それから5年も経った現在では400万台に迫ったか追い越しているのではないか。

 アジア開銀(ADB)がトライシクルのデータを作っているのは、ガソリンエンジンのトライシクルを電動化するプロジェクトがあって、2017年までに10万台を電動化するとなっている。

 公害対策としての電動化プロジェクトで、総事業費は5億ドルを超す巨費が投じられ、ADBは内3億ドルを融資するとなっていて、既に電動トライシクルが日本企業によって生産、運用されている。

 ところが、このプロジェクトは個人事業主であるトライシクル運転手に融資して所有させるため、元々資力のない運転手が高価な電動トライシクルを持つことは不可能で早くも行き詰っている。

 このプロジェクト、トライシクルなどに乗ったことのない日本のJICAや銀行屋がフィリピンの実情を知らずに作った代物で、甚だ評判が良くなく、早くから頓挫すると指摘されていたがその通りになっている。

 

 電動化となると従来のエンジンとは違う整備体系となり、その整備体制や充電設備など包括的に考えられなければならないし、何よりも致命的なのは乗車定員が少ないことで、多くの乗客を運んでいる現状から地方では普及が難しい。

 

 それでも電動トライシクルは国内で生産されていて運用もされているが、運用区域が狭い範囲に限られていて、まだ本格的に全国的展開とはならず、連れて導入台数も予定の10分の1以下と惨憺たる有様。

 こういう机上では成功する予定のプロジェクトというのはフィリピンの過去には多く、特にJICAが絡んだ無駄な、あるいは失敗したプロジェクトはいくらでもあり、税金が空しく消えている。

 その問題点は自分の懐から出していない『税金』が当てられるためで、無駄だろうが失敗しようが誰も責任を取らず、成功譚を大袈裟にしているのが日本のODAのこの手の実態である。

 

 話は横道に逸れたが、トライシクル運転手も日銭商売で、いくら一生懸命に働いても下層階級の範疇から抜け出られないのが現実であるが、それでも時々そういった家庭から子どもが弁護士になったとか士官学校を一番で卒業したといったニュースが流れる。

 ニュースになる位だから稀な例になるのだが、日銭商売で子どもを育て高等教育を受けさせる運転手を思うと、怠惰と思われがちなフィリピン人も働き者は多いことが分かる。

 

 トライシクルを構成するオートバイだが、現在フィリピンは爆発的なオートバイ・ブームで2016年にはオートバイ所有は530万台を超えた程度であったが、今では1000万台に達しているのではないか。

 

 そのため、交通事故も激増し、実際車で道路を走ると右に左にオートバイがすり抜けて走り、渋滞時には平気でセンタラインを超えて反対車線を走って来るのが当たり前で危険極まりない。

 

 このオートバイ・ブームもオートバイが分割で買い易くなったのが一因だが、フィリピンは金利が非常に高く年利20%は取られ、これは例えば5万ペソのオートバイを36回払いにした場合、総額で10万ペソを超える金額になる。

 一ヶ月当たり3000ペソになり、最低賃金が1日500ペソを超えた程度の大多数には負担は大きいが、トライシクルやジプニーに払っている交通費を考えると無理してでも買って、例えば夫婦相乗りならば元は取れるということになる。

 となると従来トライシクルを利用していた層が離れることになり、トライシクル運転手の収入にも影響は出ると思うが、今のところそういった話はないものの、徐々に効いてくるのではないか。

 


 

author:cebushima, category:この一枚2019年 セブ篇, 19:12
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へそ曲がりセブ島暮らし2019年 その(36) 第25回参議院選挙は終わって

 フィリピンでは3年ごとに選挙が行われ、今年の5月13日(月曜日)に選挙があった。

【写真はミンダナオ島北部にある島にて】

 月曜日を投票日にしている理由は分からないが、アメリカも月曜日に投票が行われるので、かつてアメリカの植民地であったフィリピンもその真似をしているようだ。

 前回のフィリピンの選挙は2016年で、この時は正副大統領選もあり、候補が乱立して盛り上がり投票率は82%近く、最初は泡沫候補といわれたダヴァオ市長であったドゥテルテが当選した。

 フィリピンの大統領というのは上院議員経験者がほとんどで、フィリピンでも辺境と位置付けられるミンダナオ島の大きな都市とはいえ、一介の市長が大統領に当選するなど異例中の異例になる。

 2019年に行われた選挙は上下院議員、自治体首長と議員を選ぶ地域密着型なので投票率はやはり80%を超えたと思うし、選挙を巡って殺害事件が発生するような激戦自治体では、それを超える投票率が記録されたようだ。

 投票率が高いから政治への関心が高いとは必ずしもいえないが、逆に低過ぎるのは政治に関心がなさ過ぎるともいえ、7月21日に投開票が行われた日本の参議院選挙は稀に見る低投票率、48.8%となった。

 これは過去最低だった1995年に行われた参院選の44.52%に次ぐ低率で、24年ぶりに50%を割り込み3年前の参院選では54.7%を記録していて、6%近くも下回るという結果となった。

 日本の選挙の投票率は当日の天気の要素も強いといわれ、実際、天気が良くて外出に適すと投票する人は少なくなり、反対に雨降り、荒天だと出足が鈍って投票率が下がる。

 今回の参院選の投票日当日の天気は、西日本側に大雨が降って東日本側は曇天模様で、大雨に見舞われた地方は別にして劇的に投票率が下がってしまうほどではなかった。

 今回の選挙に争点がなく盛り上がらなかったという指摘もあるが、与野党間にはそれなりの争点はあるし、1人区では野党側の共闘が成立し、そういった選挙区では盛り上がったのではないかと思われる。

 それでも記録的な低投票率となったのは、有権者の間に政治に対する無関心、諦め感が反映したためであり、この傾向は権力を維持している自民党有利に働く。

 自民党の安倍が長期政権を続けていられるのも、このお蔭で、自民党は有権者の半分以下の投票の30%程度の得票率で議席数は減らしていても、第1党の位置は盤石であった。

 この数字を見て分かるのは、アメリカのトランプが当選し今も強気でいられるのは、自分を支持する層だけを対象にして向いていれば良いことと、日本の安倍自民党がそっくり同じということである。

 これが国内の『分断』ということになり、反対層は相手にしなくても大丈夫という戦略が蔓延し、これはおそらく商品を売る手法と同じで、今や政治は広告会社が動かしているという指摘は当たっている。

 さて、選挙前には各党の獲得議席予想が各メディアを通じて発表されるが、今回の議席予測はどこもほぼ予測通りになっていて誤差はほとんどなかった。

 そういった意味ではあらかじめ情勢は決まっていたような選挙で、予測が当たったのは政治に対する有権者の無関心さと関係がある。

 

選挙後の政党別では、自民党が3年前の選挙では57議席を得ているのに今回は54議席と、定員が増えているのに減らしていて、勝利というほどの力はないが、上手く誤魔化している。

 自民党の腰巾着である公明党は前回13から14と1議席増加しているが、創価学会の組織票が低投票率に助けられた結果であり、このところの選挙で同党は得票数を減らし続けていた限界が見えている。

 この2党で与党を形成し、大手メディアは与党で過半数得を超えたなどと、どういう視点で流しているのか分からないニュースを垂れ流しているが、自民党の広告戦略が大手メディアを抱き込んでいる証拠であろう。

 野党の立ち位置を標榜しているが中味は自民党と変わらない維新が8から10へと2議席増やしているが、この3党併せても参議院では憲法改定発議の出来る3分の2に届かなかったから、護憲勢力は皮一枚で繋がった。

 野党では旧民主党が分裂して生まれた立憲民主党が17から22と5議席増やし、国民民主党が7から6へと1議席減らす結果となったが、分裂していなければ議席は増やせたのではないか。

 共産党は9から7へ2議席減らし、組織票が固い同党も低投票率には勝てなかったようで、これから癖の強い党派ながら案外と無党派層が同党に投票しているのが分かる。

 政党として消滅する危機にあった社民党だが今回は1議席を得て、政党として首は繋がったが、自民党と対峙していた旧社会党の流れを組む同党は風前の灯火で、今回は判官贔屓のバネが効いたのではないか。

 今回の参院選で話題性を持ったのはれいわ新撰組で、党首の山本は東京選挙区に出ていれば再選間違いなかったが、あえて比例区に回り候補名簿3位とした。

 その結果は2議席を得て本人は落選するが、比例区候補者中では最大得票の90万余票を得ていて、かつての全国区なら悠々当選するから選挙制度そのものに釈然としない者も多かったのではないか。

 れいわの当選者2名は車椅子に乗る重い障碍者で、その意味では史上初めて国会に重い障碍者を送り込んだ戦略は評価して良く、インパクトは強い。

 またNHKから国民を守る党と、何やら怪しげな党が1議席を得たが、この候補者、今度の参院議長になる人物より当選順位では一つ上というから驚くし、自民党の御用放送であるNHKに対する反感というものが根強いことが分かる。

 こうして結果は出たが、盛り上がらない選挙にしたのが安倍自民党の戦略で、それがまんまと成功し、こういう無気力さに操作されてしまう現今の日本の空気というのは非常に危険と感じた第25回参議院選挙であった。


 

author:cebushima, category:へそ曲がりセブ島暮らし 2019, 19:00
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