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ヴィエンチャン暮らし2015年 その (1) 宗教と表現、ミリタリズム
 2015年、最初に書く題がイキナリ小難しくなっているが、Facebookに代表されるつまみ食いの小賢しい下らぬ身辺見せびらかしよりは、少しは内容のあるものを書きたいとあえて取り上げた。

 フィリピンの人口は1億人を既に超えていて、その80%はカトリックの信者だという。

 カトリックというのは生まれてからの受洗、結婚、死亡に至るまで人生の節目節目に大きく関わっていて、私の様な不信心な者には巧妙な一大産業ではないかと思い、このシステムを考えて実行した宗教者というものは、偉大な宣伝マンと思っている。

 どのような宗教組織といえども広報を抜きには存在できず、キリスト暦でいうカトリック2000年以上の時間は大変な蓄積であることは間違いなく、チョッとやソットで立ち向かえる相手ではないのも事実。

 その組織を束ねるローマ法王が現在フィリピンを訪問し、2013年の台風ヨランダの被災地を訪ねて激励を行っている。それを受け入れる政府も宗教界も外部から見れば『狂奔』状態で、もちろん信者もそれ以上の有様となっている。

 あんな爺さんのどこがどうなのかと思っても、そこは宗教、理屈では説明できないものがそこにはある。今更持ち出すまでもないが『宗教は麻薬と同じ』と喝破したのはマルクスだが、信仰心を持つ人を揶揄するつもりは毛頭ないが、宗教の負の面を見るとマルクスの言葉は間違っていない。

 フランスで出版社が襲われ死者を出し、他にも襲撃事件があった。このニュースを聞いたのはタイ・ノンカイのホテルに滞在している時だったが、既に犯人達は制圧され、顔写真や経歴など公表されていた。

 このニュースを聞いて、最初に思ったのは顔写真まである連中の把握を警察国家フランスの公安連中は重装備の武器を持つまで野放しにしていた実態で、フランス政府はその失態を隠すために大規模なデモを『表現の自由を守る』を標榜、すり替えて組織したと見るのは勘ぐり過ぎか。

 この事件を巡って色々な見解が出ているが、キリスト社会とイスラム社会の衝突と捉えるのが大勢となっている。そこから生まれるのは互いの『憎悪』であって、イスラム教徒への偏見は一層増したと見て良いだろう。

 それで宗教に素人の私にも分かったことだが、キリストもイスラムも『神』という具体的な偶像はなく、キリスト教がイエスを、イスラム教がマホメット(ムハマンド)を神の使いとして遣わし、偶像崇拝を取っていない宗教だということである。

 キリスト教はその偶像崇拝が緩くて、具体的な神の像というのは安置されているが、イスラムはこの点厳格で一切認めていない。仏教の場合は結構仏像として具体化しているが、仏教は偶像崇拝はOKの宗旨のように思えるが、そちら方面に興味があれば自分で調べて欲しい。

 このため、フランスの出版社がムハマンドの風刺画を載せたのはけしからんとなって襲撃された。と世間一般では見るだろうが果たしてそうだろうか。日本でも安倍政権になって軍国化への道が着々と敷かれているが、これを簡単に言えば『軍国化』であり、世界的には『ミリタリズム』と呼んでいる。

 早い話が銃による覇権であって、今の世界はこのミリタリズムが蔓延しているのも事実。これにイスラム世界がくっついて今なお中東地域を中心に戦火が収まるどころか拡大の真っ最中。このようになったのもアメリカのブッシュ政権が世界に大嘘をついてイラクに軍事展開したのが要因の一つだと指摘する向きが強い。

 いわゆる『湾岸戦争』だが、この時、日本の自民党海部政権は目の玉の飛び出るような軍事費(確か1兆円に近いと思った)を多国籍軍に出していることを、今の日本人は忘れているだろうな。

 勿論多国籍軍というからフランスもイギリスも、西側諸国はこぞって参戦した(記憶はうろ覚えだがドイツは派兵しなかった?)。このツケが西側諸国に対する襲撃事件につながっていると見ても間違いないし、それをすり替えてイスラム教を信じる奴らはけしからんと繋げるのは危険で短絡過ぎる。

 フランスの襲撃事件は移民問題もあるし、貧困格差の問題もあり、日本も人出不足と安く人件費を浮かせるために貧しい国から労働者を受け入れ、果てまた準移民的な立場で外国人を受け入れようと躍起だが、ヨーロッパの移民政策の破綻が指摘されている現在、経済活動の利便さだけで外国人を日本に入れようというのは同じ轍を繰り返すのではないか。

 最後に表現の自由についてだが、イスラムは寛容な宗教と聞くが、たかが禁じられている偶像の風刺画が乗ったくらいで頭に来るのはおかしく、もっと余裕を持つべきではないか。

 こうは書くものの信者にとってはこういう言い草も頭に来るものだろうが、それが武力を持って封殺になるということは決して許されるものではない。憎むべきは世界に蔓延する『ミリタリズム』ではないか。

【写真は2015年1月1日の初日の出―ラオス南部、チャンパサックのメコン川で撮影】


 
author:cebushima, category:ヴィエンチャン暮らし 2015年, 12:00
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