RSS | ATOM | SEARCH
続・へそ曲がりセブ島暮らし100景 その90 日本編・桜12選 不忍池桜トンネル
不忍池桜トンネル 中学生になって、都電で学校まで通った。当時の都内の足は都電が当たり前で、重宝で安かった。(どこまで乗っても往復25円)今は網の目のように張り巡らしている地下鉄は、戦前からあった『銀座線』と戦後の『丸の内線』だけで、中学3年の時に『日比谷線』が開通して、都内はその3線だけだった。

 自宅から水天宮行き16番系統に乗って、仲御徒町で大塚行きに乗り換えていたが、この大塚行き路線は学校の多い文京区を横断するために、朝は通学生で大混雑した。特に女子系の学校が多く、セーラー服にもまれて電車に乗ったのも今では懐かしい想い出となっている。
 この仲御徒町が今でこそ東京の名所となっている『アメ横』のある場所で、まだ戦後の妖しい雰囲気が横溢していて、中学生の私には格好の寄り道場所だった。
 近年はスッキリ店構えも明るく整理されているが、当時のガード下は迷路で、扱う品物も『舶来物』という言葉がピッタリし、行き交う人も何となく胡散臭そうな感じがあった。
 米軍の放出品を売る店がたくさんあり、手に取って触るだけでもそう遠くない時代の戦争の匂いをかび臭さと共に感じさせてくれたし、また『モデル・ガン』の店が多く、随分入り浸った。
 今はモデル・ガンも各種の規制がかかっていて、面白みのない代物になっているが、その頃は弾こそ出ないが本物と見紛う逸品がいくらでも手に入った。

 中学生時代のアメ横を歩いている記憶はかなり残っているが、不忍池を歩いている記憶はまったくない。関心は薄かったのであろうし、ましてや写真に写る桜を愛でるような感覚は大人の感性であって、中学生位が風雅を味わっているようでは気持ちが悪い。
 左右にぬるんだ水面を見ながら桜のトンネルを歩くここは気に入りの場所でもあり、外人客も多かった。桜だけではなく芽吹いた柳の新緑と混じりながら桜の花びらが散るさまは、『桃源』という言葉を思い出させた。

author:cebushima, category:続・へそ曲がりセブ島暮らし100景, 12:18
-, trackbacks(0), pookmark
続・へそ曲がりセブ島暮らし100景 その89 日本編・桜12選 不忍池
不忍池 中段右彼方にあるビルが写っていなければ、江戸時代もかくあるような桜の並木光景である。ビルの手前に小さく写っている弁天堂から、池を二つに分ける歩道の両側に枝振りの良い桜が咲き誇る。桜は満開ながら手前の蓮の様子に冬枯れが残っていて面白い対称を見せる。はぐれた渡り鳥もまだ池に浮かび、点景に彩りを添えてくれる。
 ここには上野動物園の水族館があり、本園と結ぶモノレールがあったが姿を見なかったから廃止されたようだ。短い距離だったが開通当時は子ども心にも東京でもっともモダンな乗り物に感じた。

この池では子どもの頃、魚釣りをした記憶もあり、当然当時はまだ鄙びた雰囲気を残していた。近年は目障りな高層ビルが池の周りにこれ見よがしに作られ、眺望という点では醜くなっている。
 池のそばに日本画家の横山大観の旧宅がある。宅を構えた頃は、池を間近にして画題に事欠かない雰囲気を保っていただろうが、まさかこのような猥雑な風景になってしまうとは、鬼籍の大観も想像出来なかったであろう。

池の周りには名物になっているのか、テント掛けの古道具屋がたくさん店を広げている。『こんな物が売り物になるのか』と、あちらこちらと春の陽を浴びながら寄り道しながら冷やかしていると、桜の花吹雪に遭遇する楽しみを味わえた。

 不忍池近辺は古い東京の名残りがあって、森鴎外の小説『雁』には池に通じる近くの無縁坂が舞台になっている。小説に出て来る蕎麦屋の『連玉庵』もまだ健在である。
 この他、2月頃の梅の名所、湯島天神、三四郎池の東大構内へとそぞろ歩きには都合の良い道がたくさんある。不忍池から広小路に抜ける途中は池之端といって、江戸時代から続く盛り場で、今でも櫛の十三屋、組紐の道明と老舗の店が残る。
 近年の盛り場は金太郎飴と同じで、これといった特徴がなくなり、どこへ行っても同じ店構えでつまらなくなった。
author:cebushima, category:続・へそ曲がりセブ島暮らし100景, 11:43
-, trackbacks(0), pookmark
続・へそ曲がりセブ島暮らし100景 その88 日本編・桜12選 上野公園
上野公園 この数年、日本には4月の桜の開花時を狙って帰っている。今年は4月2日から10日まで日本に滞在したが、セブに長らく住居を定めていると、今や日本に帰るというより、日本に旅行するという感覚になっている。実質1週間と少々の日程は旅行者としては程好い長さであった。
 セブ―成田間にはフィリピン航空の直行便が就航しているが、今回はセブ―香港―成田のコースを取ってキャセイ航空を利用した。キャセイは距離が長くなるにも関わらず運賃が15%以上も安い。サービスも良いので選んだが、セブを午前中に発って実家のある東京に着くのは深夜に近く、安いだけでは考え物だった。

 今年の日本行きは昨年と較べると1週間早かった。これは日本の桜開花情報が例年より早く開花を伝えたためだった。特に写真の上野公園の桜が飛行機のスケジュールを決める前に、満開になったなどとニュースが入り、急遽出発を早めた。
 今年の日本の冬は例年と較べてかなり寒かったという話で、こういった気候の時、桜の開花は早めに一気に始まるらしい。都内の桜情報はあれよあれよという間に満開を伝え、日本に着いた時は花の見頃を逸したかなと思った。
 これが上手くしたもので寒い季節が長い時は花の開花も長く、滞在中に雨も降ったが何れの桜もしっかり花びらを保持し、散り際の潔さは今回はあまり感じられなかった。

 上野公園は小学校時代からお馴染みの場所で、学校の写生大会はこの公園まで行った。科学博物館などは薄気味悪い雰囲気一杯だったが、好奇心を抱かせた場所だった。その頃はあまり桜には関心を持たなかったが、両親に連れられて夜桜に行った思い出もある。
 今の噴水のある場所が小高い山になっていて、転げまわった記憶も残るし、常磐線からは上野の博物館の建物が堂々と見えて、いかにも上野のお山という感じだった。今はビルに埋もれてしまってそういった眺望はまったく失ってしまった。
author:cebushima, category:続・へそ曲がりセブ島暮らし100景, 11:18
-, trackbacks(0), pookmark