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フィリピン・よもやま帖 2020 その−(5) フィリピンの新型コロナ・ウィルス対策も出たとこ勝負

 在フィリピン日本大使館が、3月17日午前3時10分に『当分の間休館、閉鎖する』と発表したが、僅か6時間余の午前9時45分にその措置を撤回し、仔細はその後の発表を待つようにとなった。

 

【写真−1 戦前に造られ戦火も受けたセブ州庁舎】

 

 こういうドタバタともいえる混乱が、国を代表する公館で発生したのは既にフィリピンが異常事態に突入している証で、新型コロナ・ウィルスの情報を正確に分析するべき機関の正常な思考さえも蝕んで来ているようだ。

 

 世界保健機構(WHO)が新型コロナ・ウィルスはようやく『パンデミック(Pandemic)』だと宣言をし、パンデミックとは世界的流行病のことをいうが、もう一つ『アウトブレイク(Outbreak)』というのがあって、こちらは突発的な発生病を指すが、どちらにしても『流行り病』であることには変わりない。

 

 WHOの宣言は遅過ぎたという指摘が強く、発生源の中国が終息に向かっているとの自作自演キャンペーンが出るのと同時に宣言が出され、ここでもWHOは中国に牛耳られているとの批判は絶えない。

 

 その中国の終息に向かっている発表から、今度は海外から中国へ入る人間を制限する動きに出る『逆隔離』措置をすると発表し、いかにも中国らしいすり替えと責任の転嫁の巧さには毎度ながら感心しつつも呆れる。

 

 冒頭の在フィリピン日本大使館の混乱ぶりは、3月14日に政府がマニラ首都圏の事実上の封鎖から、16日にルソン島全域の封鎖に踏み切ったことから来るもので、人権の問題を別にすれば戒厳令より措置は厳しい内容になっている。

 

 その決定だが、4月14日までの学校の閉鎖、移動の制限、とりわけ首都圏への近隣からの出入りには検問を設け、正当な通勤者と許可のある者しか立ち入れず、軽量鉄道などの公共輸送機関は停止などと多岐に渡り指示が出ている。

 

 ルソン島閉鎖という大胆な措置を取った17日現在の国内の感染者は3桁に満たない人数でやり過ぎとの声も高いが、金持ち優先、医療体制の弱いフィリピンとしては何としても感染を食い止めたい危機感は感じられる。

 

【写真−2 セブの下町カルボン市場近辺はいつもと変わらず】

 

 その措置の中で、3月17日午前0時より国内にある国際空港から72時間を過ぎたら出国が出来なくなる項目があって、フィリピンを旅行、在住する外国人の中に恐怖が走った。

 

 入国に関しては入国後2週間の隔離義務が生じているので、実質的にこの時期に入って来る外国人は少なく、航空会社も国際便を減らし、フィリピン第2位のセブパシフィック航空など国際、国内便とも完全に運航休止してしまった。

 

 出国が72時間以内なら可能という措置は、セブで多く学んでいる語学研修生への影響も甚大で、英語学校自体も閉鎖命令を受けているために学ぶことを諦めて帰国するかどうかと迷っている研修生を直撃。

 

 セブ−日本間はフィリピン航空とセブパシフィック航空の2社が直行便を飛ばしているが、セブパシフィック航空は既に15日から取り止めていて、フィリピン航空事務所に帰国を急ぐ研修生が押しかけ大混乱となった。

 

 満席状態のため、セブ−東京間片道6万円などというボッタくり運賃が提示され、フィリピン航空の火事場泥棒的な対応に非難は集まっているが、再度の倒産が噂されている同航空としては、何を言われようが稼げる時に稼ぎたいのが本音であろう。

 

 ところが、外国人の出国に関しては時間を設けず可能とするとの通達が出て、通達を出すフィリピン政府側も見通せない状況で朝令暮改状態に陥り、急遽帰国を決めたフィリピン在住の外国人はあれは何だったのだと怒り沸騰。

 

 政府のルソン島閉鎖措置を受けてセブ州【写真−1が州庁舎】は20日より、マクタン・セブ国際空港から入国する人に対して2週間の検疫隔離期間を行うと発表し、実質的な入国拒否に踏み切った。

 

 それ以前からセブ市やマンダウエ市などは夜間外出禁止令が出ていて、夜に商売する業界はただでさえ客が減っているのに大打撃を受けているが、近隣に違法駐車や大音響で迷惑をかけている店が営業できなくなり歓迎する向きもある。

 

 政府発表と給料日が重なったために、市内にあるスーパーマーケットなどでは買い溜め行動に走る者が続出したが、これはやはりトイレットペーパーを買い溜めに走る心理と同じで、デマに踊らされているに過ぎないが、インターネットの時代には防げない。

 

 そういった混乱が伝わる中、久し振りにセブの生鮮市場のカルボン【写真−2】に買い物に行ったが、市場の人出はいつもと変わらず、売っている野菜類も出し惜しみや価格が高くなったという現象は見られなかった。

 

 しかも、マスクをして買い物をしている人は稀で、セブでもマスクの買い占めで手に入らないなど全く嘘みたいで、市中でもマスクをしているのはセブに在住する韓国人や中国人、日本人などの外国人が目立つ。

 

【写真−3 新型コロナ・ウィルス騒ぎが始まる前のセブのモールはいつも通り】

 

 こうして閉鎖は実行されているが、必要な者は閉鎖地区への移動は身分証の提示で怠りなく出来、社会生活まで閉鎖されてしまう訳ではないが、不要不急の外出は控えろということで、人の集まる場所は閑散とし商売上がったりが続出。

 

 冒頭に在フィリピン日本大使館の閉鎖問題を取り上げたが、フィリピンの証券取引所は当分の間閉鎖すると発表し、資本主義の牙城である証券取引所を閉めてしまうとはどういうことかと思うが、そのくらい国内は危機感が強いということになる。

 

 この流れの中セブのリゾートは観光客が来なくなって、関連する業種は苦境となり、セブを代表する高級リゾートでは宿泊料金の投げ売りが始まっているし、マンダウエ市にある日系のホテルなど普段の5分の1くらいしか窓の明かりが点かず、観光客の宿泊は皆無に近いのではないか。

 

 新型ウィルスより怖いのは世界中がヒステリー状態になっていることだが、誰にも先が読めないのは確かながら、毎年流行るインフルエンザと同等、あるいはそれ以下のウィルスとの見方もあり無闇に恐れる必要はないとの指摘もある。

 

 フィリピンなど新型コロナ・ウィルスよりも『デング熱』の流行の方が問題で、デング熱は蚊の媒介から発症するもので、新型コロナ・ウィルス対策とは別物でそちらが疎かになっては元も子もない。

 

 と書いているとマンダウエ市で感染者が出たとのニュースが流れた。これが本当ならセブで最初の感染者で、セブ島隣のネグロス島でも感染者が出ているから閉鎖措置も既に遅いのかと思うし、先述した国内感染者も3月17日現在、187人、死者14人と一挙に跳ね上がった。


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2020, 20:05
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