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フィリピン・よもやま帖 2019 その−(15) ミンダナオ島南部地震で分かるフィリピンの建築の危なさ

 10月29日と31日にミンダナオ島南部で地震があり、死者21人、行方不明者2人、負傷者424人の大きな人的被害を受けた。

【写真−1 容積率などお構いなしに敷地一杯に建てられる】

 この被害の中で驚かされるのは公的発表による全壊家屋2万戸以上という数字で、半壊や一部損壊を含めれば地震で被害を受けた戸数はこの何倍にもなるのではないか。

 こう書くと、強震か烈震クラスの強烈な地震が一帯を襲ったかのような印象を持つが、最初の地震はマグニチュード(M)6.6、次の地震はM6.5と観測された。

 

 これを分かり易い『震度』に置き換えてみると、この震度という基準も国や組織によってマチマチで数値がかなり違っていて混乱するが、ここでは日本の気象庁が発表している震度を参考にする。

 

 それによると、今回のミンダナオ島南部地震はフィリピンでは震度6と発表されたが、日本の気象庁震度に換算すると震度4の中震であり、震度4というのは地震大国日本ではいつもあるチョッと強い地震である。

 

 震度4は屋内では睡眠中のほとんどの人が目を覚まして身の危険を感じ、重心の高い物が落下、ガラスの振動、屋外では電線の揺れがあり、老朽家屋を除き家屋への損傷は起きないとある。

 

 それが冒頭に書いたように大きな被害を生じたのは、フィリピンの建物の造りに耐震性がなかったことと、いい加減な施工が当たり前であったため、被害を受けた人々には言い方は悪いがバラック同然の家屋が多いためから来ている。

 

 特にコンクリート造りのビルが根元から折れているのがあって、こういったビルの被害の様子を見ると、柱や梁に適正な鉄筋が使われていない、あるいは全く入っていない手抜きが多い。

 

 写真−1は今回の地震で市内で4階建てのコンドミニアムの下2階が崩壊した被害を出したダヴァオ市で以前写したもので、恐らくダヴァオ市内では最高の高さになるコンドミニアムで、40階くらいの高層建築になる。

 

 写真を撮った時は躯体工事の真っ最中で、昔の記憶の中のダヴァオ市内は高い建物などなかったが、今年行った時はかなりの高いビルの姿が市内各所に散見された。

 

【写真−2 このいい加減な施工を見ると恐怖以上】

 

 写真−1の高層コンドミニアムを遠くから眺めて、どうもその施工状況に変な感じがしてじっくり見ると、写真−2でその施工のいい加減さがはっきり分かった。

 

 写真−2の柱の部分、2階から3階にかけての柱が2階部分で細くなっていて、特に左から3番目の柱など極端に細くなって3階のスラブに繋がっていて、明らかに施工の欠陥と分かる。

 

 こういった個所は他にもあって、写真の2階から3階のこの部分の柱はデザイン上の問題なのかと好意的に考えてもそれはあり得ず、こういう重大な欠陥をそのまま外部に露出している業者の頭を疑うが、フィリピンではこの程度は何でもないのかも知れない。

 

 こういう欠陥も外装に石を張ったりして綺麗に隠すから分からないだろうと考えているのだろうが、40階にも及ぶ高層ビルの根元のいい加減さを見ると、とても安心して住める物件ではないのは確かである。

 

 先述したように市内で4階建てのコンドミニアムで下2階部分が崩壊したように、フィリピンの鉄筋コンクリート造りの建物に信頼性がないということは前からいわれていたが、今回の地震を機に建築許可の見直しを始めるというが既に遅い。

 

 フィリピンは不動産バブルで各地に高層の商用ビル、コンドミニアムが林立しているが、震度5クラスの地震が来ればマニラ首都圏ではかなりのビルが崩壊すると予測されていて、それはセブでも例外ではない。

 

 教科書で習った『環太平洋火山帯』の縁に位置するフィリピンは火山も多く、当然地震も頻繁にあり、最近でも思い出すのは2013年10月のM7.1を記録したセブ島隣の『ボホール地震』があり、この地震ではボホール島を中心に200人近くが亡くなり、セブでも死者があり、セブの観光名所サント・ニーニョ教会の鐘楼が崩れビルの倒壊もあった。

 

【写真−3 セブ市内のビルだが厚化粧で中味はどうなっているか分からない】

 

 この時、小生は家人と共に郊外の墓地を訪れていて、地震のあった時はボホール島の方角から地面が揺れて伝わったのが分かり、立っているには少し腰を落とす必要があった。

 

 この時、一番心配したのはセブとマクタン島を繋ぐ古い橋で、この橋を架けた日本の技術屋が震度4から5以上の地震があったら橋は崩落する危険が高く、通常でもこの橋は渡らない方が良いと言っていた。

 

 幸いこの橋は崩落せず、今もいつも通り架かっているが、交通渋滞などで新橋を避けて通る時など、やはりその危険性に身構えてしまい、信頼性がないのは確かである。

 

 写真−3は最近写したセブ市内のビジネス中心地で、セブでも一番といわれるショッピング・モールがあり、かつてのゴルフ場後も写真の様にビルが林立し、最近では高層のコンドミニアムが続々と造られている。

 こうして見た目は綺麗でもその骨となる基礎や柱、梁など果たして地震に耐えられるように施工されているかどうか分からず、設計者も施工業者もその時が来てみないと分からず、いざ地震で崩壊したら関係者は『想定外』と言い訳をするのであろう。

 

 セブには50階に達する超高層のコンドミニアムが完成しているが、そういう高い建物に住むにはそれなりの覚悟が必要で、投資だなんだと日本人の小金持ちがこの手のコンドミニアムをフィリピンで購入するのはどうかと思うが、自分で住む訳ではないから良いのであろう。


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2019, 20:53
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