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フィリピン・よもやま帖 2019 その−(8) 儲かっているフィリピンの病院

 経済は年6%台を維持し、アセアン加盟国の中で高い成長率を持つフィリピンだが、ここ30年くらいの時間で俯瞰してみると、著しく増えたのは銀行支店とガソリンスタンドで、経済の発展を裏付けている。



 ただし、国民の中で銀行口座を持っているのは半数にも満たないらしく、口座があっても会社からの給与振り込み、財布代わりに使っているだけで、預金するという本来の用途で維持している人は少ないようだ。

 写真はセブに在る病院で、この病院はセブ市の中心にあったが、数年前にマンダウエ市の旧埋め立て地にご覧のような大きな病院を建てた。写真は2階にある正面入り口で、中に入ると高級ホテルのロビーより広いロビーが待ち構えていて、病院というより民間会社の自社ビルといった感じを受ける。

 

 これだけ大きいとどこでも院内に食堂や売店を備えているが、ここには喫茶店が何店も入り、コンビニや美容室まであり、1階にはフード・コートまであり、ミニ・モールのような感じさえある。


 この病院はセブに在る病院の中では技術的に信頼できるとされ、大きな病気をするとこの病院へ行くという人が多いものの、金のない人には縁はなく、貧乏人は公立の病院に押し掛ける。

 病院名から分かるように中国系の人物が創設した病院で、セブに住む中国系には絶対の信頼を持っていて、中国系というのは同郷を中心に横の繋がりの強い人々で、移住先の国を信用せずそこから自衛意識を持ち命に直結する病院や消防組織を自前で作っている。

 この中国系の消防組織はフィリピンの消防より信頼があり、出動すると安心感を得るという。フィリピンの消防が信頼されないのは消防士が『火事場泥棒』をするためで、その様子がテレビ中継されて大問題になったことがあった。

 警察も同じことをやっていて、何かの事件捜査で警官を屋内に入れる時、警官による盗難を警戒するために警官の動きを見張っているというから笑えない話である。

 写真の病院は内部や設備も近代的になっているが、旧病院の方はセブで一番という評判の割には清潔感はなく、これはフィリピンにある病院に共通していて、マニラの国際空港が世界一評判が悪かったのもトイレなどの保守が悪かったためで、こういうのは一朝一夕では治らない。

 写真の病院のすぐ傍に医科大学が設立したやはり大きな病院があって、この医科大学の附属病院もセブ市中心にあるが、やはり清潔感には乏しい感じが強かった。

 セブにはいくつか医学部を持つ大学があり学費も高いが、今は医学部よりも看護師養成の学部の方に人気があり、雨後の筍のように看護師養成コースを持つ学校が増え、粗製乱造ではないかとの批判もあった。

 看護師が一番人気になったのはアメリカや欧米の病院ではフィリピン人看護師を大量に受け入れているためで、看護師資格を取って海外に移民できれば、貧困からの脱出が確実なためで、コースを学ぶ人は100%海外就労希望といっても過言ではない。

 このように毎年大量に生まれる看護師だが、フィリピンの受験者の半分は不合格になり、日本のような80%以上が合格している様子とはだいぶ違い、この低い合格率はやはりコース乱造による教育の不備と見て良い。

 日本では医者は高給取りとイメージは強いが、フィリピンではそれほどでもなく、海外に出た看護師が高給を取るというので、医者が看護師のコースを学び直して、看護師として海外に出るという話も珍しくない。

 その医者の能力だが、30年近く前に発熱でやはりセブで定評のある病院へ大事を取って入院したことがあり、その時、検査をしたその結果が『チブス』と医者に言われた時には驚いた。

 チブスというのは法定伝染病で大変な病気と思っていて、消毒やら何やら大騒ぎになって良いのだが、そういう動きはなくいつの間にか熱は引いて退院となり、この時の経験から、どうもフィリピンの医者は信用できないなと思ったが、本当にチブスであったかも知れずこの件に関して非難する気は毛頭ない。

 フィリピンの医者の収入は大したことはないと書いたが、高収入を得ている医者も多く、病院に長く駐車している車を見ると高級な車が多くこれは医者が乗っているなと想像するし、個人開業病院でも大きな病院も多く収入もそれなりに高いと見て良い。

 社会的地位も日本同様にあるが、日本とフィリピンの医者で大きく違うのは、フィリピンは医学部の卒業時に皆『医学博士』の称号を得ていることで、その中味は分からないが、日本のように研修医になって研究を続けて博士号を得るのとはかなり違う。

 フィリピンの医者は不安があるようなことを書いたが、アメリカ帰りの優秀なフィリピン人医者はたくさんいて、こういった医者は最新技術を会得していてマニラの大きな専門病院で働いている。

 ただし、この手の病院は富裕層専門で貧乏人には縁がなく、また『医療観光』といって、海外からの富裕層の病人を受け入れて治療するが、これは医療費が比較的安く収まるためで、美容整形や腎臓などの臓器移植などはかなり盛んである。

 フィリピンには日本のような完備された健康保険はないが、それでも今の政権は『皆保険』を標榜していて、これが実現すれば非常な進歩であり、フィリピンの5歳以下の幼児の3分の1は栄養不良状態と指摘されている中、大きな力にはなると思う。

 ただし、写真の病院へ行けるような層は皆保険も何も関係なく、自腹で医療費を払えるから、設備の整った大きな病院が続々生まれるということは、貧富の差が一段と進んだ証左なのかも知れない。


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2019, 18:22
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