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フィリピン 2019選挙 その(5) 選挙結果−その2 大統領や副大統領経験者が落選した地方選挙

 5月13日に投開票が行われ、選ばれた者が正規に仕事が引き継がれ始めるのは7月1日からで、一ヶ月半も空白となるこの期間は政治、行政の停滞を招くはずだが、フィリピンは意に介さないようだ。

【滅茶苦茶に張られた市議選の選挙ポスター これでも綺麗な方】

 この長過ぎる引き継ぎ期間では現職と新人が争い、新人が勝ち現職が追い出される形になった時、嫌がらせが頻発し、マニラ市長選で3選をかけた元大統領エストラダ(82歳)は副市長(44歳)に敗れ、その引き継ぎ式に欠席し意趣返しをした。

 また、セブ市長選で再選を狙ったオスメニャは、これも副市長と前市長のタッグに敗れ、その腹いせに市庁舎の市長執務室の床やトイレのタイルを剥がすなど使えないように破壊し、人格そのものに批判が起き、内務自治省もこの行為は看過できないと声明を出している。

 『晩節を汚す』という言葉があるが、エストラダは大統領職を2年半ほど勤めて汚職で追われ、裁判では終身刑になったが恩赦で出た後にマニラ市長選に出て当選。

 エストラダのように政治権力の最高峰に登り詰めた人物が一介の市長職に出た理由は分からないが、マニラ市の虚名で見栄を張れたと思い、エストラダを追い出した次の大統領のアロヨも退任後下院議員になったから、権力の座は美味しいのであろう。

 そのエストラダ、若い時は白皙のアクション男優として名を売った著名な芸能人だが、政治へのスタートはマニラ首都圏サンファン町(現在は市)の町長が皮切りで、その後、上院議員、副大統領とトントンと登り1998年に大統領に当選。

 このサンファン市は首都圏でも富裕層が住む地域として有名だが、エストラダが国政に転身しても一族の支配は続き、今年の市長選では孫を擁立したが、副市長に敗れ一族支配は終焉に近づいた。

 エストラダ一族は定員24人しかいない上院議員に本妻(元上院議員)と愛人の息子それぞれ1人を送り込んでいたが、今回改選を迎え次点と15位という結果になって落選。

 他にも娘がマニラ市議会選で落選。甥が首都圏に隣接するラグナ州知事の返り咲きを計ったが落選。同じく甥がリサール州カインタ市副市長選で落選と、エストラダの虚名は通じなかった。

 一族からはエストラダ本人を含めて9人が立候補しているが、姪が強固な地盤であるサンファン市議選で当選したのみで、8人が落選し、半世紀続いたエストラダ政治王朝もこれで終焉かと見られている。

 首都圏マカティ市では下院議員選に出た前副大統領のビナイが落選し、エストラダ同様一族の王朝落日が囁かれ、マカティ市はフィリピン一の裕福な市で、外資系企業や大手企業が蝟集するビジネス街を持ちその税収は莫大である。

 そのマカティ市に君臨したのがビナイ一族で、汚職疑惑も数多くあり問題になりながら上手にすり抜けても、そういった汚点が落選に結び付き、ビナイ王朝のトップのビナイ前副大統領が落選するなど天地が引っくり返ってもあり得なかったが、今回はあり得た。

  もっともその予兆は選挙前からあって、本丸のマカティ市長の座を巡って現職の姉と元職の弟が争い、選挙戦では姉と弟の泥試合が続き、一族と取り巻き陣営は分裂し激烈な選挙戦が繰り広げられたが姉が当選。

 こういった一族による政治支配はフィリピン中どこにもあって、一族支配のない民主的に選ばれた自治体などほとんどないとまでいわれ、これは一族支配によって各種の利権を独占、集中されそのおこぼれに群がる取り巻きが増々強化されるためで、フィリピン政治の悪因となっている。

 落日のエストラダ一族であったが、一方現大統領ドゥテルテ一族は子ども4人が立候補し全員当選し、今回選挙の一番の勝者は一族安泰のドゥテルテだとまでいわれている。

 その内訳は、牙城であるダヴァオ市長選で娘が圧倒的な票差で再選し、むしろ殺される可能性のあった対抗馬が出て選挙があったこと自体に驚かされるが、八百長だとの話もある。

 この娘は父親の跡目を引き継ぎ、2022年大統領選に父親の跡目を狙って立候補するのではといわれ、全国政党を結成していて今回の選挙でも躍進しているが、さすがに二代続けてミンダナオ島から大統領を出すのは地域開発に不味いとの見方も出ていて、その動向は不確か。

 そのダヴァオ副市長には弟が当選したが、この人物サーフィンしかできない人物として有名であったが、父親と姉の名前で悠々当選。また、ドゥテルテの息子は姉と組んで副市長をやっていたが、違法薬物関与と密輸疑惑が持ち上がって、父親の顔に泥を塗った形になって任期途中で辞任。

 一見潔いようだが説明も何もなくて、事実が暴露されるのを怖れてほとぼりが冷めるまでの時間稼ぎで、『人の噂も75日』を地で行って今回はダヴァオ選挙区の下院議員に出て当選。しかも下院議長を決める段になって議長の座に意欲を示している。

 こうなるとドゥテルテの名前さえあれば無敵は間違いなく、人物の適否に関係なく票を入れるようで、選挙民の良識など皆無というかこのように問題にする方がおかしいのかも知れない。

 最後にフィリピン最大の州になるセブ州知事選のことに触れるが、ここ2期6年続けて、アキノ前大統領を出した自由党のダヴィデが座を守っていた。ダヴィデは元最高裁長官の息子で州議会議員から2013年知事選に挑戦し、アキノ大統領を生んだ流れに乗って当選。

 この時の対抗馬は3期9年セブ州知事を務めたグエン・ガルシア(女性)の弟であり、このガルシア家というのはセブの政治勢力を2分する政治一族で、父親もセブ州知事を歴任し州知事の座はガルシア家の指定席であった。

 復活を目指した2016年もダヴィデに敗れ今回の選挙を迎えた訳だが、ガルシア家は最強の前知事のグエンを担ぎ出して雪辱を計った。グエンは連続3期9年の規定で、知事職を退きセブ州西岸の選挙区の下院議員に鞍替えし2期連続当選。3期目を狙うかと見られたが知事選に回った。

 迎えるダヴィデと良い勝負になると思われていたが、どういう訳かダヴィデは副知事に立候補し、知事選にはタッグを組んだ副知事(女性)を擁立。こういうことがあるのがフィリピンの選挙であり驚くことではない。

 どうもダヴィデは知事選ではグエンに勝てないと見て副知事選に回ったのではないかと見られ、選挙結果はやはり知事にグエン、副知事にダヴィデが当選した。このように反対党派で公職が分かれる例は結構多く、ある意味ではチェック機能が働くともいわれているが、無意味な政争が起きることが多く、今後を注視したい。


 

author:cebushima, category:フィリピン 2019選挙, 17:53
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