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フィリピン・よもやま帖 2020 その−(10) あれよあれよと10万人を超えてしまったフィリピンの新型コロナ感染者−『在外邦人は棄民か−10万円を支給せよ』

 数字は目まぐるしく変わる中、6月初めのフィリピン国内の新型コロナ感染者数は16997人、死者は966人であった。

【写真−1 セブ市の中心地だがこの賑わいはコロナ禍では失せている】

 それから2ヶ月経った8月2日の感染者数は104185人、死者数2059人と感染者数で6倍以上、死者数では2倍余となり、3月半ば以来『戒厳令』並みの強硬な防疫措置を講じても、押さえ込むことに成功はしていない。

 日本も1日1000人以上の感染者を数え、特に東京都など連日200〜400人以上の大量感染者を出し大騒ぎをしているが、それでも8月2日現在で日本の感染者数39326人、死者1013人でフィリピンと比べると数字は小さい。

 いつからだかはっきり覚えていないが、世界中で新型コロナ感染が騒がれていた時期、フィリピンは日本の感染者数をかなり下回っている時期が続いていたが、いつの間にか逆転をしてしまい、日本の防疫に成功したとは思えない中、フィリピンの数字が際立つ。

 東南アジア地域ではインドネシアが1番感染者が多く、次にフィリピンが続いているが、その数字を仔細に見るとインドネシアの8月2日現在の感染者数は111455人、死者5236人となっていて、フィリピンの同日の感染者数104185人より少し上回っている。

 

 しかし、1日当たりの感染者数を見るとインドネシアは1519人、フィリピンは5032人と明らかにフィリピンは激増しているのが分かり、このままフィリピンの感染者数1日5000人が続くとフィリピンは数日でインドネシアを追い超し、東南アジアで最悪の感染国になるのは火を見るより明らかである。

 ただし、死者数で比較するとインドネシアは5236人と、フィリピンの死者数2059人の倍以上死者を生じていて、医療体制なのか治療法の違いなのか分からないが、少しは気休めながら安心出来る感じはする。

 この死者数を『致死率』という数字で見ると、新型コロナ発生国の中国が5.34%、日本3.0%で、インドネシア4.76%、フィリピン2.30%となり、インドネシアの死者数は多いことが数字で裏付けられる。

 フィリピンが日本より数字が低かった時に、小生など何れフィリピンは日本を追い超すと思っていたが、実際その通りになり、これは日本型の防疫が成功、フィリピン型は失敗している証明というには少々苦しい。

 

 フィリピンは防疫体制を段階的に定めて、地域ごとに適用しているがその防疫体制の区別が分かり難く、一番措置のきついのが防疫強化地域(ECQ)、次に規制が緩められる一般防疫地域(MGQ)、その次に修正一般的防疫地域(MGCQ)、一般防疫地域(GCQ)の4段階になっている。

 これらの違いはどこがどうなっているのか分からないのが実感で、多くのフィリピン国民も戸惑い、3月半ばからフィリピンは上述の強制的な防疫措置が取られ既に4ヶ月半経って、国民の間には慣れや緩みが出ているのが事実で、日本も同じでこれが感染を防げない主因にもなっている。

 フィリピンの防疫措置は冒頭の方で『戒厳令』並みと書いたように、日本の様な『自粛』といった生温いものではなく、交通、営業活動全てに渡って強制的に止められ、経済活動云々など歯牙にもかけない規制である。

 個人に対しても医療関係など許可を得た者以外は外出禁止で、夜間は厳しく外出禁止、特に20歳未満、学生、60歳以上の者は防疫措置のレベルに関わりなく外出禁止状態が続いている。


【写真−2 フィリピン人の大好きなショッピング・モールも一部営業のみ】

 そうなると、抜け穴を通るのがフィリピン人で、連日違反で大量に逮捕されていて、大統領自身が外出禁止に違反する者は射殺しても構わないと言い出す始末。

 ただし、聞いた話では捕まっても初犯の場合、腕立て伏せをやらされて放免するらしく、取り締まる方も真剣に考えていないようだが、再犯すると拘束、罰金を科せられるものの軍や警察を動員しても本当に抑止効果はあるのかどうかは疑問。

 その意味で、一時は絶望的な感染を示していた中国・武漢の収束具合から、中国の全体主義から来る有無をいわせない対策の方が、民主国家を標榜する国よりコロナ対策には効果があると見る向きもあるが、まだその判断は時期尚早であろうし、全体国家の肩を持つ気には毛頭ならない。

 フィリピンの防疫措置の判断は2週間ごとに出されるが、セブ市は爆発感染地域なのに自治体の対策がなっていないと、中央から対策チームが送り込まれ国内唯一の防疫強化地域(ECQ)となった。

 その2週間後に中央政府の介入効果があったとは思えないが、セブはマニラ首都圏などと同じ、一段規制の緩む一般防疫地域(MGQ)となり、7月末を迎えた。

 セブは更に規制が緩められ一般防疫地域(GCQ)となったが、セブ市の感染者数は7月末現在感染者数8966人で、日毎の感染者数は減らずどう見ても規制が緩められる状況ではないが、そういう判断となった。


 マニラ首都圏や近隣州も一般防疫地域(GCQ)となったが、8月3日になって朝令暮改を地で行く、マニラ首都圏と近隣州は修正一般的防疫地域(MGCQ)に逆戻りしてしまった。

 

 マニラ首都圏と近隣州はフィリピンの経済中心地で、近隣州などは日本の製造工場がかなり進出していて、そのため経済界から措置を緩めるよう圧力がかかっていたが、やはり現実の感染者増には勝てなく規制が強まった。

 

 ちなみに、セブに隣接するマンダウエ市は7月30日現在の感染者数は1780人で、これはセブ島全体に感染者が激増している傾向を示していて、収束に向かっていないのが分かる。

 

 セブ島北端の町に小屋があって、コロナ禍の前は時々訪れていて、セブ市の感染が爆発している中、田舎の方ならまだ安全ではないかと一時的に避難することを考えたこともあったが、車で移動することは禁止され諦めている。

 

 そのどう見てもコロナとは遠い町でも最新のニュースでは、7月末までの感染者数は36人、死者1人を生じているから、フィリピン中の都会、田舎を問わずコロナ・ウィルスから逃れられないのが分かる。

 

 この町は人口7万人程度だからまだ感染者は少ないのかも知れないが、最新の感染者内訳を見ると、14人中、10歳未満3人、10代6人、20代から60代まで各1人となっていて、感染が世代に関わらず広く及ぼしているのが分かる。

 

 これは感染の出ている市や町も同じ様な状況と思われるが、このセブの北端の町の病院はあることにはあるが、とてもコロナに対処出来る病院とは思えず、感染を押さえるのは難しく、それでも感染発生が町の中央に片寄っていることが救いといえば救い。

 

 日本全体が感染より経済活動に重心が傾き、『GO TO』などと具にもつかないキャンペーンを始めてしまった中、フィリピンの様になってしまうのは時間の問題で、人間の命か経済かと二者択一を迫る日本の世論の流れは危険である。

 


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2020, 19:45
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