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フィリピン・よもやま帖 2020 その−(8) 6月1日から規制が緩められたフィリピンだが元の木阿弥になりそう 『在外邦人は棄民なのか−10万円支給を求める』

 前回その−(7)で書いた時点、4月15日現在のフィリピン国内の新型コロナ・ウィルス感染者数は5500人、死者は350人であったが、それから1ヶ月半を過ぎた6月2日には感染者18997人、死亡者966人となった。

 

【写真−1 こういう光景は2ヶ月間消えていたがまた元の木阿弥】

 

 一方、日本はその−(7)では感染者数16000人であったが17057人に、死者数が713人から903人と右肩上がりは変わらないが、フィリピン程も激増はしていず、ついにフィリピンが日本を追い超してしまった。

 

 フィリピンはその−(7)から感染者で4倍近く、死亡者は3倍近くに増えていて、その増加も一向に衰える様子はない中、政府は今までの規制を緩める措置を6月1日に出した。

 

 フィリピンは3月半ばに首都圏とルソン島を封鎖する戒厳令以上に厳しい措置を取り、その時点では評価はされ、セブなど他の地域でも自治体が追随し次々と封鎖措置を取った。

 

 この封鎖も段階があって、一番厳しいのは『防疫強化地域=ECQ』で、20歳以下、60歳以上者の外出禁止、医療従事者など許可された人間だけが移動可能で、軽量鉄道やバス、ジプニーなど交通機関も停止、営業も薬局や食料品店を除いて止められた。

 その他夜間外出禁止もあり、交通渋滞で知られるマニラ首都圏の道路からは車が消えたために排気ガスは激減して、夜空に星が見えたとニュースになるくらいで、マニラ湾は産業、生活用水の流入が少なくなって澄み、公害問題を改めて考えさせる契機ともなった。

 

 セブも封鎖されて、マニラ同様車の姿は消し、拙宅そばの渋滞道路など車が通る事さえ稀になり排気ガスは激減、その間ずいぶん青空の澄んだ日が続き、空を仰ぎ見てはこの青空が続いてくれと願ったものである。

 

 セブは海のリゾートで公害には無縁のイメージは高いが、海と大気の汚染は酷く、1990年代にセブ市街を見下ろす高台から、街全体を覆うスモッグの塊を見た時は驚いたものだが、あれから悪くなることはあっても良くなることはなく、そういう汚染都市に知らずに来る観光客も気の毒。

 

【写真−2 モール好きのフィリピン人には封鎖は痛い】

 

 先述の一番厳しい『防疫強化地域=ECQ』から6月1日に緩められた措置は『一般防疫地域=GCQ』といわれるもので、外出は自由になったが20歳以下、60歳以上は変わらず不可だが、仕事によっては認められている。

 

 交通機関も鉄道、バス、タクシー、トライシクルなどを認めているが乗車人数は大幅に制限を受け、重要な足であるジプニーは乗客同士の接触が著しいため、一部の車種を除いて運行不可となっている。

 

 乗り物の乗車制限で、首都圏を走る軽量鉄道など従来の20%程度を見込み、乗車制限を設けているが、普段でさえ日常的に改札制限をしている駅では乗れない乗客が殺到し逆効果となっている。

 

 こういった施策をする連中は運転手付きの自家用車で制限なく通っているから、鉄道やバスなどを使わざるを得ない層に対しては、綺麗ごとをいうだけで何にも打開策は示せないし、出す気もなく、もっといけないのはそれに従う飼い慣らされてしまった人々か。

 

 セブ市やマンダウエ市も一時は国内唯一の『修正防疫強化地域=MECQ』として残されるはずであったが、どういう経緯か分からないがマニラ首都圏などと同じGCQ措置となるものの、感染者数増加の勢いは止まっていない。

 

 こういった防疫体制の緩和は人間の命を守るというより、落ち込んでしまった経済を動かすために見切り発車した訳で、これはフィリピンに限らずどこの国でも同じである。

 

 日本では夜の町を待ちきれなくて繰り出す人が激増しているが、人間の生活には『不要不急』が必要であることが分かるし、また無駄なことも生きることには必要で、効率ばかりで動く現代社会の盲点をも突いた。

 

【写真−3 封鎖措置はファストフード好きのフィリピン人に大打撃】

 

 飲食店などはまだ制限がかかっていて、思えば3月半ばから小生は外食に出かけていないが、この期間はデリバリー・サービスが盛んになって拙宅前の小路でもその手のオートバイは行き来するが、何を注文しているかと見ればタダでも食べたくないハンバーガー・チェーンの品物。

 

 世間はデリバリー・サービスの新しい時代などと持ち上げる向きはあるが、所詮は昔からある『出前』であって、それに手数料を上乗せした商売であり、人の褌で金を稼いでいる感が強く、有望なビジネスなどと持ち上げるのはどうかと思う。

 

 小生など、デリバリーに携わる人を貶める気は毛頭ないが、人と人の間を泳ぐ形体から、感染を広めているような気がしてとても利用する気はないし、何よりも出前を頼んでまで食べたい物はセブにはないから論外になる。

 

 経済の落ち込みについて、どこの国もマイナス成長が予測されているが、最近民間調査機関によってフィリピンの今年度の成長率はマイナス7%という驚くべき数字が出ている。

 

 フィリピンの近年の経済成長率はアセアン諸国でも抜きん出ていて、このところ7%台の成長率を記録していたから、前年より14%も落ち込む勘定になり、フィリピンがマイナス成長を記録したのは1998年のマイナス0.6%以来という。

 

 1998年のフィリピンは13代大統領にエストラダが当選、就任した年で映画の中の悪役をやっつけるエストラダの俳優イメージで投票した選挙民もどうかと思うが、話題性はあっても大統領としては近年にない不作。

 

 エストラダは2000年に汚職のために議会から弾劾を受け退陣するが、後を引き継いだのが副大統領であったアロヨで、このアロヨからエストラダは汚職で逮捕され有罪判決を受けるが2007年に恩赦を受ける。

 

 ここでフィリピン的なのはそのアロヨも次のアキノ政権から汚職で逮捕、勾留され裁判にかけられるが、当人はルソン島中部の親代々の地盤から下院議員に出て当選し、大統領を辞めた人物が議員になったと話題になったが、その後下院議長にもなっているからフィリピンの政治は不可思議である。

 

 エストラダもしぶとく、恩赦後の2010年大統領選に出て次点となったが、選挙に出られること事態驚異ながら、そんなものはお構いなしで、2013年にはマニラ市の市長選に出て現職を破って当選し、2016年に再選、2019年に3選を狙ったが、副市長に敗れ運は尽きた。

 

 エストラダ既に83歳。平均寿命の短いフィリピンではかなりの高齢者だが、権力の旨味を吸った連中は死ぬまでその座にしがみ付くようで、見苦しくこれは国を問わず共通で、日本の無様な安倍も同様で辞めないのが不思議である。

 

 話は脱線したが、せっかく人間らしい環境が新型コロナ・ウィルスによって作られたが、標題に書いたように『元の木阿弥』になるようで、車やオートバイの吐き出す騒音がまた元の様に戻っている。

 


 

author:cebushima, category:フィリピン・よもやま帖 2020, 19:09
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