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この一枚2019年 セブ篇 その(10) セブで食べる『トンカツ』

 『菜食主義』という言葉があり、肉食をする人と分けているが、個人が食べる好みで区別するなど全く馬鹿らしい話で、『主義』などと大袈裟に触れ回るものでもないし、それを偉そうに宣うのも愚の骨頂。

【これでソースが良ければいうことなし】

 食べ物の好みなど千差万別で、小生自身は野菜と魚が好きで肉は滅多に食べないが『菜食主義者』が優れているとかなど一度も思ったことはないし、思いたくもない。

 菜食主義者も極めると牛乳や玉子も食べないらしく、魚を食べる場合何センチ以下の魚なら良いなどともっともらしくいうが、能書き以上に日本の禅僧などいわれなくても菜食生活者であり、結構長命、矍鑠とした人が多い。

 

小生は滅多に肉を食べないと書いたが、子どもの時は家族で鍋を囲み、すき焼きはもちろん豚のバラ肉と大根を入れた鍋など楽しみに食べた。ただし、子どもの頃から鶏肉は嫌いで食べることはおろか、鶏肉店の前を通るだけでも息を詰めて通り過ぎたし、何よりも家では鶏肉料理というものを出された経験がない。

 これは母親の一族が戦国時代に落ち武者になって、とある村で寝込んでいた時に鶏が鳴いて敵の襲来を告げたために助かったことで、それ以降一族は鶏を食べることを禁じたという故事から来ている。

 まるで、小説にあるような話だが、史実的には母親の一族は徳川が江戸に開府以前に今の荒川沿いに土着していたのは確からしいが、本当でも嘘でもどちらでも良く、その伝承と小生の鶏を食べないことはあまり関係がないような気がする。

 子どもの時もあまり肉を好まなかったが、唯一『牛カツ』だけは食べられた。これは牛肉だと脂身が少なく、豚肉の脂身を嫌っていたためだと思うが、長じて『酢豚』が好きになっているから単純な好き嫌いのようだ。

 写真はセブ島北部のレストランで食べた『トンカツ』で、店での正式名称は『ウィーン風』となっていて、オーストリアのウィーンは日本のトンカツに似た料理を出すことで知られ、『Schnitzel(シュニッツエル)』と呼ばれている。

 この店、セブ島北の田舎には不釣り合いな店構えで、料理も都会風の洒落た物を出していて、この地域に住む外国人を対象にしているようだが、こちら方面に来た時は寄って食べることを楽しみにしている。

 ウィーン風トンカツの大きさは本場同様かなり大きく、『草鞋』を連想させるが、赤身の肉質はそれほど悪くなく柔らかく、日本風トンカツと違って右上の椀に入っているソースはいわゆるトンカツ・ソースではなくせっかくの料理が惜しい。

 トンカツというのはソース次第で味の良し悪しがあって、毎度この店で食べる時は日本製の『トンカツ・ソース』を持参するべきであったといつも思うが、そこまで入れ込むほどでもない。

 なお、皿の左上にある白い塊は『マッシュ・ポテト』で、茹でたジャガイモを潰していて、普通はインスタント物を出す店が多い中では手間をかけた分殊勝であり程良い塩味は良かった。

 ウィーン風トンカツの値段だが200ペソを少し超えた程度で、セブで食べたら量が半分程度でその倍以上はするから、かなり得した感じのする一皿となった。

 フィリピンにはトンカツに似た料理はないが、日本食レストランを中心にトンカツをどこでも出していて、トンカツ専門を売り物にする店も進出していて、試しにセブに出店しているトンカツ専門店に行って食べたが、値段の高い割には満足感も薄く、また行って食べたいとは思わなかった。

 トンカツといえばラオス・ヴィエンチャンに住んでいた時に、メコン川対岸にあるタイ・ノンカイに橋を渡って出て、そこのショッピング・モール内に出店していた日系のレストランで食べることが多かった。

 その店で頼むのは『サバの塩焼き定食』が多かったが、時々トンカツ定食も頼んだが、全体に内容は貧弱な感じはあっても値段とタイの北辺の町という場所を考えるとそんなところだろうと納得は出来た。

 この間、マニラへ行った時にやはり日系のカレー専門店を見つけ、そこで頼んだのが『カツカレー』で、カツカレーなど日本に居た時は頼んだことはなかったが、なぜか海外に出ていると食べたくなる一品になる。

 さて、日本のトンカツだが、トンカツの発祥は上野ともいわれ、実際上野界隈にはトンカツ屋が多く、評判になっている店もいくつかあり、その中で、東京のトンカツ屋の中で十指に入るという老舗のトンカツ屋へ行ったことがあった。

 トンカツに付き物のキャベツの千切りが薄く揃っていて、芸術品のように感じるものの肝心のトンカツの味の方はもちろん美味いと思ったが、どう美味かったかは覚えていず、覚えているのは値段の高さであった。

 やはり上野にサラリーマン向けのトンカツ屋があって、日本へ帰ると行くが、そこではトンカツ定食が1000円ほどで食べられ、味、量ともに満足でき、トンカツなど安くて美味いを真骨頂とする食べ物の代表と思われ、先ほどの老舗高級店のトンカツと比べるとどうも世界が違い過ぎる。


 

author:cebushima, category:この一枚2019年 セブ篇, 19:09
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