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へそ曲がりセブ島暮らし2017年 その(4) 100年を超すセブ・リロアンの灯台

 マクタン・セブ国際空港からの飛行便の離陸は風向によって変わるが、多くは北東の方角に飛び発ち上昇、行き先によって左右に針路を取り、マニラ方面は左側、日本へは右側に旋回する。

【境界を区切る塀などの建造物がなく敷地内は立入自由】

 その離陸した直後、高度をグングン上げている左側の窓の外にはセブ市街と山々、それに連なる郊外の街並みが続き、海岸線も同時に見える。離陸後に針路を左右に取るポイントがリロアン町の上空で、その町の外れの海岸部に灯台が見える。

 写真はその灯台で、週末に初めてこの灯台を訪れた。フィリピンというのはどこへ行っても人が大勢住んでいて、リロアンの中心からかなり離れていても家は連なり、午後も遅い時間であったので涼しくなり、人々が湧いてくるような感じで道端に屯している。

 灯台へ通じる道はこんな辺鄙な場所なのに結構整備されていて、これは灯台のある敷地一帯をフィリピンの不動産会社大手が住宅地として開発、分譲したためで、その分譲地は高い塀に囲まれ、入り口でチェックを受けるようになっていて、これはレベルの高いこのような分譲地(サブ・デヴィジョンと呼ばれる)では普通に見られる。

 ただし、この分譲地は灯台が立地されているように海を望む眺望の良い所にあり、不動産会社は別荘地として開発したようだ。ここで面白いのはその分譲地が灯台へ通じる道路によって左右に分かれていることで、なぜこんな変則的な開発になったのか不思議である。

 写真の灯台の周りと海へと続く土地は低い灌木の生えた草地になっていて、先の分譲地一帯を含めてここは元々国有地であったのが、どういう経緯なのか分譲地を不動産会社に払い下げ、灯台から海に続く原野だけは国の分として残したのではないかと想像する。

 この不動産会社、マニラ首都圏のマカティ市といえばフィリピン一のビジネス地域だが、ここはこの不動産会社が飛行場跡を買収して開発し、セブでも海軍特攻隊が出撃した元飛行場跡を買収し、また近くのゴルフ場跡地もビジネス地域として開発しているスペイン系財閥が持つ。

 飛行場跡など国有地だから、汚職天国のフィリピンの事情を考えるとその辺りは相当な口利き、裏金が出たと思い、今大阪で問題になっている小学校開設のためのタダ同然の国有地払い下げなど、スケールの点ではフィリピンの方が何千倍も大きく、日本の問題など児戯に等しい。

 とは言ってもこの小学校に戦前回帰主義者の安倍の名前を冠するとか、妻が名誉校長に就任していたなど関与した事実は明らかにされて、追及されるとヒステリックに反論するなど噴飯もので、安倍は辞任に値する行為ではないか。

 と生臭い話は向こうに置いて、写真の灯台、正確には『BAGACAY POINT
』と呼ばれ、スペイン植民地時代の1857
年に最初の灯台が築かれた。その後1904年に石灰岩を積み上げた現在の姿の灯台となり、近年コンクリートで改修、補強され高さは22mある。

 立地地点の丘は海抜52mあり、海面から74mの高さから明かりを灯しているが、かつては有人だったであろうが、今は完全自動化されていて、灯台の左側下に見える屋根はソーラー・パネルで見た目は古めかしいが電源も近代化されている。

 陸に住む多くの人間にとって灯台は直接の縁はないが、かつて夢中になって参加した相模湾を中心としたヨット・レースで、島回りコースの深夜に飛沫に濡れながら規則的に明滅する灯台を見つめては心を大きくした想い出を持つ。

 現代の海を航行する船はその頃と較べて電子機器が格段に発達してはいるが、自らの眼で確認する灯台ほどありがたいものはない。

 灯台で思い出すのは1957年公開映画『喜びも悲しみも幾歳月』がある。この映画は実家近所にあった松竹封切館で観たが、子ども心にも感動を与えてくれ、『おいら岬の〜』で始まる若山彰の主題歌もずいぶん口ずさんだ。

 この映画を監督した木下恵介、主演の高峰秀子、佐田啓二既に亡く、時代を感じさせるが、木下恵介は1986年に『新・喜びも悲しみも幾歳月』を作っていて、この時出演した植木等の名演技は忘れられない。

 さて、リロアンの灯台、せっかくの建物と環境がありそれなりの環境資源と思うが、現状は周りは全く整備されていなくて、訪れた人用の綺麗なトイレがなく、何とも小便臭く、またその辺に腰を下ろすのも結構だがしっかりした休む場所がない。

 こういった物はすぐ予算がどうとかいうが、少額の入場料を徴収して管理すれば良いことで、灯台前面の原野など樹を植えて自然公園らしい環境を造るのも一考と思うがどうであろうか。


 

author:cebushima, category:へそ曲がりセブ島暮らし 2017, 19:00
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