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フィリピン事件帖2014 (4) 大金を持ち込む日本人と盗られる日本人続出
 218日深夜、日本航空を利用してマニラ国際空港第一ターミナルに到着した千葉県在住、50歳の男性が、空港税関で現金5300万円をスーツケース内の紙袋に入れて持ち込もうとしたところ、税関職員に摘発されて、拘束される事件があった。

 フィリピン中央銀行の規定では1万ドル相当以上の外貨を持ち込む場合は、当局に申告が義務付けられていて、翌19日、この男性は中央銀行規定違反で検察局に送検された。

 調べによるとこの男性は『カジノで使う予定』と持ち込んだ理由を説明していて、男性の日本での職業、背景は明らかにされていないが、今回摘発される以前にも相当の大金を持ち込んでいたと見られている。

 また調べに対して『フィリピン中央銀行の規定など知らなかった』と、供述しているがこの現金は『没収』となり、返還を求める場合、フィリピンの弁護士を立てて訴訟を起こさなければならず、相当な時間と金をかける必要がある。なお、今回は持ち込んだフィリピン側で摘発されたが、日本の税関でも100万円相当の現金を持ち出す場合は事前の申告が義務付けられていて、知らない日本人も多いのではと見られている。

 同じような事件は20138月末、同空港に到着した日本人3人組が4600万ペソ(約1億円)相当の外貨を持ち込もうとして摘発されていて、フィリピン税関は通常なら検査などしないが、相次ぐ摘発はビジネスマン風の日本人を集中的に検査しているためではないかと見られている。

 この事件の場合は、『銅を買うため』と供述していて、こういった形で事業資金や運転資金を持ち込む日本の会社、日本人は多いと見られ警報が発せられている。

 一方、日本人が街中で引ったくりに遭ったり、スリに遭ったりは毎日のように発生していて、219日、65歳、三重県在住の日本人男性が現金180万ペソ(約412万円)を強奪される事件が起きた。現場は引ったくり多発の繁華街、マニラ市エルミタ地区で、時間は午後1時ごろというから危険な時間帯ではない。

 この事件は『パスポートを見せろ』とか『ここは禁煙地区』などと言いがかりを付ける、警官の服装をしたグループが常習的に日本人を狙っていて、2011年頃から発生し、昨年は届けられただけでも3件あった。

 こういった警官に見せかけたグループは確認されているだけでも3グループあって、確認されているのに捕まえられないのがフィリピンの不思議さとなるが、現職警官が加わっている可能性が高いために、警邏する警官の順路や時間が筒抜けで摘発は難しい状態となっている。

 また、こういった被害に遭うのは主に滞在期間の短い観光客のため、被害届を出してもすぐに出国してしまうために捜査も行き詰ってしまい、この盲点を突いた巧妙な犯罪ともいえる。

 今回の強奪事件は、この日本人男性がフィリピンで新しく事業を始めようとして用意した資金で、車に乗った犯人グループから『パスポートを見せろ』といわれ、その場から走って逃げたが車で追いつかれ、男性がズボンのポケットに入れていた現金入り紙袋を強奪し、車で逃走したという。目撃者は昼下がりなので大勢いたと思われるが、フィリピン人はこういった犯罪現場では決して助けようとせず、関わらないようにしているから、この事件も他と同様盗られ損となりそうである。

 この男性はフィリピンに知人が居ることもあって定期的にフィリピンを訪れているが、こういった犯罪に巻き込まれたのは初めてという。このような犯罪に巻き込まれる日本人の多くは、少々フィリピンに慣れた人か、全くの無防備な観光客に集中していて、この手の人は特に注意が肝要と警察関係者は述べている。

 【写真はタイ・バンコク国際空港ターミナル。タイはフィリピンのように外貨持ち込み規定があるかどうか分からないが、いずれにしても金のある人間だけの問題】
 


author:cebushima, category:フィリピン事件帖 2014, 19:45
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フィリピン事件帖2014 (3) 2014年最初の邦人殺人事件はミンダナオ島で
 フィリピンは各国からの逃亡犯の逃げ場として有名で、日本人もかなり逃げ込んでいるといわれている。それだけ、受け入れる国側も犯罪の多い国と見て良く、この犯罪の多寡には数字的基準が色々あり、特に人口10万人当たりの国別殺人発生件数というのは参考になる。

 統計は古いが国連資料で141ヶ国のランキングがあって、これを見るとフィリピンは10万人に対して3.82人で80位(下位ほど殺人が多い)になっている。

 これを他の国と比較するとアジアではタイが
7.42人の109位でワースト国。『微笑みの国』と売っている割にはフィリピンの倍もあって安心できない。ちなみに日本は0.44人と少ない国上位の4位に入っていて、アメリカは5.8人の94位、フィリピンより悪く日本の実に10倍以上も殺人事件が発生する危ない国と数字ではっきり表れた。

 最悪国は中米ホンジュラスの
58人と桁違い。さて前置きはそのくらいにして、表題に入る。フィリピンで殺害される日本人は毎年5人前後で、多い時は2桁に近づきそうになる年もある。そのほとんどは男性で、稀に女性も殺される時もあり、近年ではセブでフィリピン人の夫に刺殺された日本人妻の事件が耳新しく、まだ裁判に係っているが判決の目途は立っていない。

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1日早朝、ミンダナオ島西ダヴァオ州にあるマリタ町に住む57歳の日本人が、自宅から2キロ離れた海岸で上半身裸の遺体となって発見され、警察は殺人事件とみて捜査し、邦人男性のフィリピン人妻30歳とその甥24歳、その友人24歳を殺人容疑で逮捕した。

 調べによると、
131日深夜、妻の甥と友人は木製の鈍器で後頭部を一撃し、倒れた被害者の首を刃渡り18センチのナイフで首を刺し絶命させた。その後2人はバイクに遺体を乗せて発見された浜辺に遺棄したが、警察は被害者の自宅で血の付いた複数の衣服や犯行時に使われたナイフ、オートバイなどを押収し、自宅から20キロ離れた民家に居た3人を拘束して追及した所、実行犯の2人は犯行を自供した。

 残るフィリピン人妻は『夫の行方が分からず捜索願を出そうとしていた』と述べ、事件との関わりを否認している。これに対して逮捕された実行犯の
2人は、このフィリピン人妻から夫殺害を3万ペソ(約7万円)で持ちかけられ、手付金1000ペソをもらったことを自供していて、妻の説明は虚偽と見て警察は3人を地検に送付した。

 被害者の日本での経歴などは不明だが、
3年前にこのフィリピン人妻とインターネットを通じて知り合い、3年前から事件のあった同町で暮らしていたが、語学力のない日本人がインターネットでフィリピン人とやり取りすることは難しく、日本とフィリピンの人身売買紛いの結婚斡旋のエージェントが絡んでいるのではとの見方も出ている。

 また、妻の犯行動機として被害者が妻と他の男性との浮気を疑って、結婚以来口論が絶えなかったとある。しかし口論というには日本人夫は満足に会話を妻と成立できないと見られ、一方通行状態の中、激した妻が殺害を頼んだという見方が有力で、事件のあった
131日夜も口論があったという。

 フィリピンではこういった老齢日本男と若いフィリピン人女の結婚は非常に多く、男は老後を安く見てくれる、女は夫の遺族年金や日本にある多少の財産目当て、打算の塊で一緒になるケースも少なからずあり、その多くは結婚後すぐに不仲、若い妻は他にフィリピン人の愛人を作ることが多い。

 なお、被害者は年金暮らしというが
57歳で受け取るのは不自然さもあり、ましてやミンダナオ島最大の都市、ダヴァオ市から南に80キロ下がった海沿いの何にもない町に住むのも不思議だが、どこに住もうと勝手と、内戦状態になった町や地域を含めてミンダナオ島全体では1500人ほどの在留届が日本大使館に届けられ、こういう人は度胸が良いのか無知なのか、果てまた仕方なく住んでいるのか判断に迷う存在であることは確かである。

 こういった事件が起きた時、日本大使館(今回の場合は在比日本大使館ダヴァオ出張駐在官事務所が扱う)は業務として遺体確認から、日本の遺族関係者への連絡などを行うが、事件に巻き込まれる日本人は日本と縁の切れている者も多く、荼毘にされた後、遺骨受け取りを日本側から拒否されるケースも少なくない。


 
author:cebushima, category:フィリピン事件帖 2014, 19:00
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フィリピン事件帖2014 (2) 日系幼児誘拐事件を週刊誌風に読み解く
 最近の日刊邦字紙に写真入りで掲載された事件は、そのまま読めばただの誘拐事件だが、フィリピンなりの事情を抱えた事件として追うと別の断面が見えてくる。事件は126日午後、首都圏マカティ市に住む3歳の女児の行方が分からなくなり、翌27日この幼児を育てているフィリピン人の叔母(33歳)に当たる人物の携帯電話に『身代金300万ペソ(約700万円)』を要求する文字メールが入った。

 この幼児は日本人夫とフィリピン人妻(29歳)の間に生まれた子どもで、どういう理由か分からないが、夫婦は日本に住んで幼児をフィリピンに預けて育ててもらっている。

 ここで考えられるのは、日比間の結婚は相変わらず多く、それらの夫婦は大体日本に住み子どもを育てているが、生まれた子どもが大きくなるに連れて、母親の母国語を全く知らない子に育つため、母親が母国語を覚えさせるためにフィリピンで一時的に育てる例が挙げられる。

 こういった例は結構多いというが、幼児期に覚える言語というのは吸収も速いが、忘れるのも速いという研究があって、こういった母親の思いは母国と会話で繋がりたい個人的な感傷であって、子どもにとっては何にもならないと指摘されている。

 さて、この夫婦の夫の方の年齢が不明で想像するしかないが、新聞に書いていなかったのは相当年齢が離れていたためではないかと思われる。今も昔も
60歳代の日本人男と20代のフィリピン女の結婚は多く、そういった結婚手続きをするエージェントによると『そればっかりだ』などといい、特に今は老後を見てもらうために若いフィリピン女と一緒になるヨレヨレの爺さんが多くなったとのこと。

 フィリピン女にすれば、嫌でも我慢すれば遠からぬ時期に死ぬ夫で、その夫の日本の遺族年金と少ない遺産でももらえれば『一生、自分も一族も安泰だ』と割り切っていて、愛情がどうのなどどうでも良い問題。現に、フィリピン内では『日本の遺族年金手続』を看板に掲げるエージェントも多くなり、それだけ需要があるようだし、日本男も死ぬまでともかく面倒見てもらえば『後のことは俺の知ったことはない』という無責任な手合いも激増している。

 さて、事件に戻るが、誘拐された幼児の両親はおっとり刀でフィリピンに来たから、少なくてもこの幼児は『棄民』ではないことは確か。日比夫婦間で生まれた子どもが邪魔になってフィリピンの親戚に育てさせ、涙金を送っている例などこちらには山ほどあり、育てる親戚にしても定期的に金が入るから別に苦にならない事情もある。

 ここで事件というと警察に届けることを考えるのは当たり前だが、フィリピンの警察は信用がなく、やる気もない組織として定評がある。たまにはやる気を出して捜査をすることもあるが、これは被害者側が付け届けをしたり捜査費用を出したりする場合であって、普通はマスコミに取り上げられるような事件でないと、書類になってハイそれまでとなる。

 この日本から来た夫婦、その辺りの事情はよく分かっていたのか、知恵者がいたのか、直接警察には行かず、幼児の住んでいたバランガイ(最小行政区)の事務所に行って、バランガイが路上に設置している『監視カメラ』の映像をチェック。その映像に犯人と誘拐された幼児が写っていて、犯人は幼児を育てていた叔母の元夫と判明。そこで、夫婦は動かぬ証拠を持って警察に届け、この元夫は証拠を突きつけられて犯行を自白した。

 普通だったら監視カメラをチェックするのは、いの一番に警察のやることだが、この警察は頭が回らなかったのか、面倒臭くてやらなかった、付け届けがないので動かなかったなど、どれか、あるいはそれら全部が当てはまるのだろうが、フィリピンの警察というのはこんなものだと天下に知らしめた。

 犯人は誘拐したその夜に扱いが面倒になって、マカティ市隣の市の路上に放置したと自供。そこで警察が放置された一帯を捜索した所、
29日午前3時過ぎ同地域で幼児は無事に保護された。ここで不思議に思うのは3日間近く、この幼児はどうやって保護されるまでの時間を送っていたかで、お腹も空いただろうしどこで寝ていたのか3歳では順序立てて証言できないから想像するしかない。

 恐らくマニラ首都圏の路上にたくさんいる『ストリート・チルドレン』と見られて、一人でいても誰もおかしいと思われなかったのではないかと。食事も可哀そうだといって、分けてくれる人はフィリピンには多いから飢えることはなかったのだろうし、もしかすると、ホームレスが面倒を見ていたのかもしれない。しかも、日本のように今だったら凍死するようなこともなく、どこへでも潜りこんで寝られる環境も幸いした。

 ともかく、幼児の健康状態は問題ないというのは良かったが、フィリピンのストリート・チルドレンの多さが、この幼児の命を守ったといささか逆説的な見解を述べる人間もいる。最後に犯人の動機だが、元妻に復縁を迫って断られたため腹いせでやったと供述している。

 【写真は本事件とは関係ないセブ島の子ども達】




author:cebushima, category:フィリピン事件帖 2014, 12:05
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