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Philippines 2013選挙 Watch (2) セブ州知事選 現職知事が弟と悪辣な交換
 フィリピンの2013年選挙も、立候補した上下院議員、自治体正副首長、自治体各種議員の顔触れを見ると、相変わらず政治屋の世襲・跡目相続は全国に伝染病のように蔓延している。この中で、地元セブの州知事選の状況を記したい。

 フィリピンには現在80州あって、州知事のステータスは並みの陣笠議員より高い。しかし、人口10万人に満たない小さな島が州であったり、セブのように人口400万人を超える州があったりで大小、財政規模はさまざま。

 州になると下院議員を選出できるため、今も州の分割を狙う地方政治屋の動きは多く、このセブにしても住民不在の3分割にするなどの策謀があった。

 セブ州現知事はガルシア(女性)、この人物は父親(娘に知事の座を渡して高齢の身ながら下院議員に転職)がやはりセブの知事を3期務めその跡目を継いで現在3期目。

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期目の在任中に海の中の土地を法外な公費で買って汚職と指摘され、その他の告発もあり中央の公務員特別裁判所から知事職停職6か月を受け、一時は上述裁判所に出頭せず逮捕命令も出た。

 そういった状況でも首長の場合、3期連続以上は憲法上禁止されているので、次のステップとしてガルシアは上院議員選に出ることを考えた、しかし、セブでは権力者でもしょせん地方政治屋一族の一人にしか過ぎず、全国区での知名度は思うほど広がらなかった。

 それでも本人は立候補にやる気満々、事前運動も進めていたが、事前の世論調査の結果から当選は覚束なく、金の無駄遣いと常識ある取り巻きが立候補を引き留めたのか上院選立候補は断念。

 ところがそれで終わらず、事前に絵図を描いていたのだろうが、ガルシアは下院議員である弟の地盤を譲ってもらい、その弟はセブ州知事選に立候補した。

 こういう交換はこの国ではごく当たり前で、先の3選規定に引っかかると、自分は副に下がって立候補、娘や息子、妻を正にして一家で立候補して延々と政治を思うままにするなどいくらでも例があり、特に市町首長レベルは全国的に目立つ。

 これも選挙民の民度が低いといえばそれまでで、今回はその点は長くなるので触れない。

 さて、今回のセブ州知事選、対抗馬は前回に続いて立候補したダヴィデ。【写真:この広告が載った新聞はガルシア一族の新聞。地方の政治屋は地域の広報部門を押さえてこうして権力の寡占化を進める】

 父親は最高裁長官まで勤めたセブ出身の人物で父親の人望は高いが血が繋がっていても息子はまた別人格、別人生。ただし、フィリピンは何とかの息子、娘というのが昔から『金看板』になる国で、本人の業績や人物像など二の次の風潮が強く、本人もそれを前面に押し出す例が多い。

 ダヴィデの前回得票数はガルシア一族の牙城に迫るには迫ったが惜しくも落選。今回はその雪辱戦になるが、ダヴィデの所属する与党自由党のアキノ大統領が、先日セブ州入りして支援を訴えるなど全国的に与党勢の優勢が伝えられる。

 また蒙昧だったセブ州民もさすがにガルシア一族の長年のセブ州政私物化に飽きを感じ、アキノ人気の勢いからもしかすると姉に変わって立候補した弟ガルシアを破るのではないかとの観測も出ている。

 なお、ダヴィデと組んで副知事選に立候補している人物はガルシア追い落としを計った自由党陣営の女性で、前副知事(自由党)が病気で亡くなった後を引き継ぎ現在セブ州知事代理。今回晴れて副知事選に立候補して審判を受ける。

 このようにフィリピンは知事と副知事(市町も同様)が別々に選挙で選ばれるため反対政党同士で占める場合も多く、中央のアキノ大統領と副大統領も反対政党同士の関係になっている。


 
author:cebushima, category:Philippines 2013選挙 Watch, 21:35
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Philippines 2013選挙 Watch (1) 投票日まで一カ月を切る 
 2013513日(月曜日)、フィリピンでは選挙が行われる。この様子を前回2010年に引き続いて記録に留めたい。

 前回は6年毎の大統領選もあり、アキノ息子大統領が他を寄せ付けず圧勝して誕生、大統領任期は腐敗にまみれたマルコス独裁時代に懲りて、16年のみで再選は禁止されている。

 今回の選挙は大統領に対する評価もある『中間選挙で』上院の半数と下院議員、地方自治体正副首長、州市町の地方議員全員の選挙が行われる。【写真は街で見かけた選挙カー、ボクシングのパッキャオ(再選を目指す下院議員でもある)が代表の政党リスト制登録政党】

 フィリピンは上院が日本の参議院のような存在になるが遥かに優位性があって定員はわずか24人、全国区選挙で選ばれ半数の12人を3年毎に選出する。任期は6年、再選可能だが212年限り。

 ただし、3年休めばまた出馬でき同じことを繰り返す候補者も多く、世襲、権力の重心が偏る原因の一つになっている。

 下院の方は小選挙区と政党リスト制の二つを採用、全議席数は2913年任期で解散はなし。

 連続39年までは可能で、3期やって1期を妻や子どもなどの身内に取りあえずやらせてその後また復活というパターンが蔓延していて、憲法の多選禁止精神、規定など意に介さないのがフィリピンの政治屋の最低要件と言われる始末。

 まず、上院選だが、大統領与党候補者の優位が続き、最近の世論調査でも上位当選組は与党候補が多い。

 一方、野党側は泡沫候補から奇跡の当選をした現副大統領と老害著しい現上院議長、マニラ市長選に立候補している元大統領が今回の選挙目当てで作った組織で派手な動きをしているが、選挙民も見ていてなかなか票に結びついていない。

 ただし、与党、野党と分けるがフィリピンでは曖昧な所があって、候補者によっては相互から推薦を受けているケースが多く、簡単には線引きできない特徴があるし、寝返りや党派間を渡るのは普通で、筋を通すなどといった精神論より、どちらが利になるかの現実で動くから当人も支持者もあまり気にしない政治風土が顕著である。

 次に上院立候補者の顔ぶれだが、上院新人組は副大統領の娘、あるいは大統領選に惜しくも落選した娘だとか、あるいは現上院議員の妻だとか息子だと弟だとか、の『当人はいったい何をやっている人物でどのような頭脳を持っているのかなど全く分からない』という候補者で溢れる。

 しかし、こういった七光りだけの人物ながら当選の可能性が極めて高いと調査では出ていて、『単なる芸能人同様の人気投票』との酷評もある。

 こういった現象はフィリピンの病気のようなもので、上院議員の議席を一族で守る跡目相続の何物でもなく、それを選ぶ選挙民の民度も相当落ちるのではと指摘されている。


author:cebushima, category:Philippines 2013選挙 Watch, 21:31
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