12月31日(土) 曇り、軽風肌寒し 閑話休題 《 2011年最後の日に読んでいる本 》
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2011.12.31 Saturday
読んでいると書いたようにまだ3分の2しか読んでいない。この本を今年最後としたのは偶然で、机の上に無造作に積んである文庫本の上から手に取り読んでいて意図性は全くない。
私の本の読み方は前回小説なら次はノンフィクション物、小説でも恋愛物の次はサスペンス物と目先を変える程度で大した意味はなく、積んである本の上から適当に手に取っている。
写真の手嶋龍一著『外交敗戦―130億ドルは砂に消えた』は1990年代の『湾岸戦争』を題材にしたノンフィクション本になるが、その描き方はサスペンス小説のようでもあり、ミステリーを読むような感じさえ持つ。
手嶋の文章を読んだのは今回初めてで、NHKのニュースに少々おかまっぽい口調の解説する人物との印象を持っていたが、この本の内容は多岐に渡り骨太である。それにしても湾岸戦争からもう20年以上経っているのかと感慨も覚える。
イラクがクェートに侵攻、占領したのは1990年8月2日、この時期の私はアフリカに住んでいて事態の背景は良く分からず対岸の火事どころか、ほとんど無関心でその年の年末にアフリカから、マダガスカルーモーリシャスーラ・ウニオンーセイシェルとインド洋の島々をのんびり訪ねながら日本に帰国した位で、途中飛行機が戦争の影響を受けるかなと思った程度だった。
1991年1月17日、アメリカ主導の多国籍軍がイラクに対して反攻を開始、2月28日、イラク軍の降伏を受け湾岸戦争の軍事行動は終結した。その流れをこの本では開戦前後を関係者による証言をもとに構成しているが、戦争も人間の機微が左右していると改めて思う。
この時期の日本の首相は海部俊樹、この人物はたまたま首相になってしまったといって良く、海部は『青年海外協力隊』生みの人物として知られる。
協力隊は1960年代から1970年代にかけて激しくなる学生運動に吸い寄せられる青年対策として、危機感を抱いた自民党青年部(海部は次長だった)や保守派青年運動指導者が作り上げたもので、日本のODAプロジェクトの中では割合評価は高いが、実情は多くはそれほど役に立っていず、『2年間の国費遊学』と揶揄される存在である。
さて、この湾岸戦争の時、日本は130億ドル(当時は1ドル=140円近いので1兆8千億円)もの巨費を多国籍軍に上納し、これが全く国際世界では評価されなかった内幕を手嶋は解明している。そんな巨費を良く投じられたのかと振り返って見るとバブルが弾ける直前だったから、金額に対して日本国民は麻痺していたのではないか。
当時の自民党幹事長は小澤一郎、本に出てくる内外の関係者も20年も経つと懐かしい感じがする。特にイラクのサダム・フセインの処刑日が2006年12月30日(69歳没)と知り、偶然その日にこの本を取ったことも面白い。
12月29日(木) 晴れ、微風 閑話休題 《 仕事納めの日に観る日本の映画 》
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2011.12.29 Thursday
クリスマス前後のセブは雨続きで、今年も『休暇の時は天気が悪い』ジンクス通りとなった。もっとも日本の仕事納めの28日には回復、29日は青空がのぞき、北からの風も吹き気温は低めで過ごしやすい。
クリスマス前にはフィリピン独特の『13か月目の給与』が支払われ、これは日本でいう『ボーナス』で、実績や勤続年数などとは全く関係なく一律に1か月分の額を支払えばよいから、経営者側には有利な制度といって良い。
懐の温かくなった人々は買い物、外食に消費してクリスマス休暇を楽しむ。この時期は海外からの送金も一段と増える時で、田舎から送金された金を使いに都市部に出てくるのもこの頃である。
フィリピンには仕事納めという慣習はなく、クリスマス前後に休むとあとは通常の仕事に復帰し、1月1日も平常通りに仕事をする。その昔、工場でどうしても年内中に出荷しなければいけないことがあって、クリスマス休暇に浮かれる工員を無理やり確保してクリスマス当日も働いてもらったことがあった。
今思うと1年に1回の休みに仕事をさせたことに済まない気持ちを持つが、当時は休日出勤で3倍の給与を支払っているからと奢った気持ちもあった。
さて写真は山田洋次監督『たそがれ清兵衛』のCDである。これはマニラの知人がセブに来た時、土産代わりに持ってきてくれた物である。マニラには海賊版の日本語CDの手に入る場所があり、そこで黒澤明などのCDと共に買っている。
この作品は2002年制作、その年の映画賞を総なめにした作品である。今回雨のシトシト降る午後遅く、何となく日本の映画を観たくなって選んだが、何度観ても飽きない映画の一つとなりそうだ。
この映画の後、山田洋次は2作目の『隠し剣・鬼の爪』を2004年に制作するが、どちらも武士のあり方と男女の恋愛模様がしっとりと描かれ、この映画に流れるリリシズムは湿気っぽい天気には実によく似合った。
今更書くまでもないが、この映画は従来知られている江戸言葉、侍言葉とは違って舞台となった地方藩の生な言葉で語られ、これが当時の武士の本当の話し方と納得した。
映画といえば先日、監督の『森田芳光』が亡くなった。その作品リストを見ると名前を知っている割には『家族ゲーム=1983年』と『武士の家計簿=2010年』の2本しか観ていない。武士の家計簿は日本に行った時に、近所のシネコンでたまたま見た映画で森田作品と知って観たわけではなかった(この時は続けて『最後の忠臣蔵』を観た)。
たそがれ清兵衛―鬼の爪―武士の家計簿と続く流れは新しい、日本のいわゆるチャンバラ映画が生まれるのではと思ったりする。
12月27日(火) 一晩中雨のち朝上がる 閑話休題 《 大手マスコミが選ぶ2011年10大ニュース(国際編) 》
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2011.12.27 Tuesday
昨日に続いて今日は『国際編』に触れたい。
1位=北朝鮮の金正日が急死(12月も押し迫ってのニュースのためインパクトはあっても、トップに置くのはおかしい。祝杯を挙げた人も多く時代錯誤の国の独裁者の話。内乱待望論もあるが中国の植民地として今後も北朝鮮は安泰ではないか)。
2位=欧州の財政危機と相次ぐ政権交代(自由経済などともっともらしくいっているが、内実は『自転車操業』で止まることはできないことを証明した)。
3位=中東民主化、リビアのカダフィ殺害(中東の民主化とマスコミは名付けても本当にそうだろうか。支配権力層が入れ替わっただけなのではないか。カダフィを殺しても世の中安泰とはならない)。
4位=アメリカによるビンラディン暗殺(まるで広告会社が立案して実行したような暗殺。それほど価値があったとは思えないが、オバマ以下目を引くニュースを作りたかったのだろう。アメリカがいかに駄目になったか分かる)。
5位=タイの大洪水(タイが日本企業にとってそれほど重要だったとは、このニュースで知らしめた。これで海外進出企業は『治水』も立地条件の一つとなった)。
6位=欧州に脱原発の動き(ドイツの動きを見ていると原発は既に過去の技術、再生エネルギー技術がこれからの時代を引っ張るから転換した。要は商売の種として有力と判断、いつまでも原発神話から抜けられない日本はこうして世界に取り残された)。
7位=アメリカの反格差デモ、世界に広がる(富の配分問題は昔からある。銀行以下人の金を動かして儲けている金融マフィアの意地汚さが問題)。
8位=ニュージーランド地震で日本人多数死亡(28人が亡くなったが日本人被害者でなければ忘れるニュース。それにしてもあんなに日本人がかの地で学んでいるとは驚いた)。
9位=アップル創業者死去(伝記がベストセラーらしいが、いつの世も提灯持ちは多く、それほどの人物、ニュースかと思う)。
10位=中国高速鉄道の大事故(40人死亡、その後の対応の厚かましさは中国を知る者としては普通で驚くに値しない)。
番外=世界人口70億人突破(これが1位になって良い。これからの地球はもう人類を食わすことは難しくなるのではないか。といって方や日本のように人口が減少、フィリピンのように人口爆発とあって、バランスが取れているのかも知れない。ちなみにフィリピンの人口は現在推定9,500万人以上、海外同胞を加えると既に1億を超し、10年以内には日本を追い抜く)。(写真はフィリピンの洗礼の様子、確かにこの国は人口爆発)