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フィリピン事件帖 2010 (26) フィリピン最高裁、殺人事件で逆転無罪判決
事件被害者の夫 この殺人事件は1991630日夜、マニラ首都圏のパラーニャケ市で起きた。

 押し入った何者かにより47歳の主婦、18歳、7歳の娘が刃物でそれぞれ20ヶ所近く刺されて死亡した。(写真は無罪判決が出た直後の被害者の夫)

 現場の凄惨さから被害者の名前を取って『ビスコンデ母娘虐殺事件』として報道されていて、当時も今もセンセーショナルに取り上げられている。

 この事件では犯人と目される連中が逮捕されたが、最高裁まで争われ1214日、最高裁によって全員無罪の判決が出て、即時収監中の刑務所から釈放された。

 一審の20001月に全員有罪の終身刑になり、二審の2005年でも有罪となったから犯人と目された連中にとっては地獄から天国へ降りたような気持ちであろう。

 この最高裁判決も判事の意見が分かれ、無罪7人、有罪4人だった。この二審まで有罪判決を受けていた連中は、9人いたが(内、2人は逃亡中)いずれもフィリピンに多いドラ息子連中で親は著名人、金持ちばかりである。

 特に元プロ・バスケット選手で芸能人、地元の下院議員を務めた人物、ウエッブの息子に焦点が当たった。この息子当時ドラッグ・ジャンキーで、一味とされた連中もその仲間である。

 このウェッブ、事件の渦中にフィリピンの政治エリートである上院選に立候補して当選したから、選挙民の考えることは分かり難いが、親は親、子どもは子どもで責任は別という風土がそうさせたのであろう。

 しかし、この議員次の選挙で再選はならず政治生命は終わった。しかし芸能活動は続けていて知名度は相変わらず高い。他にも芸能関係に属する親が何人もいて覗き見大好きなフィリピン人の感覚には合った事件だった。

 さて、無罪判決が出た理由だが、捜査側の無能力に尽きる。犯行現場に証拠品は無数にあったのに、フィリピンは証拠よりも目撃証言を何よりも重視する裁判体系なので疎かにしてしまった。

 また裁判は証言中心で、このため証言は恣意的に捏造されたり、虚偽証言なども買収風土もあって当たり前の中、今回も目撃証言中心で公判を維持していた。

 おかしなことに、この事件では警官が証拠隠滅をして15年の実刑を食って服役していたおまけもあった。

 証拠の中で18歳の娘はレイプされていて、当然精液とかの検体など採取されているはずだが、それが行方不明で科学的追求はできなかった。

 何しろこちらの捜査員は素手で証拠品を触って平気な位だから、20年近く前の事件の証拠に関する認識など相当酷く、杜撰だったことは想像できる。

 しかし、裁判でこんなに結果が違って出てしまうとは、裁判も結局は人間のやる仕事で、間違いは当たり前にあると思って良い。

 これで死刑判決を出して刑が執行されていたら取り返しがつかなかったとなるだろうが、被害者家族から見ればでは犯人は誰だとなるから事件の解決はされず、気持ちは休まらない。

 そういえば最近、鹿児島で老夫婦殺しの被告に死刑求刑から無罪判決が出たから何を信じて良いのやら。
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author:cebushima, category:フィリピン事件帖 2010, 20:28
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フィリピン事件帖 2010 (25) 今年で5人目、日本人射殺事件
日本人5人目の射殺事件 写真で分かるように、フィリピン唯一の日刊邦字紙『まにら新聞』の1130日(火)版にこの事件が載った。

 事件は報道される6日前の24日夜9時頃に射殺体で見つかったが、身元が遺体を保管していた葬儀社で確認されたのは26日だった。

 これも被害者と一緒にマニラを訪れていた日本人友人の届け出があったためで、同行者がなかったら確認はもっと遅れていたであろう。

 こういった外国人殺人事件は、こちらの英字紙に載るが今回の場合は私も気が付かなかったから、記事になっていなかったようだ。これが、セブの場合、外国人殺人事件だと必ず地元テレビ、新聞は必ず取り上げるから分かり、日本人は『ジャパニーズ・ナショナル』と報じられている。

 この事件の犯行現場はマニラ中央郵便局裏手の通りで、写真で分かるように左側はパッシグ川の堤防になる。被害者は35歳で数発の弾を撃ち込まれていて即死。

 何度もフィリピンに来ていて今回は21日に友人と一緒に来たが、その目的は観光だろうが詳しくは分からない。新聞の記述によると当日、友人とマニラの中華街として有名なビノンドで食事後、被害者は友人と別れて犯行現場に向かって歩いていたようだ。

 ビノンドは犯行現場の川の向こうにあり、歩いて橋を渡るようになるが、夜更けにしかもフィリピン人でも注意するような地域を、外国人が橋の上を歩くなど危険極まりなかった。ただし、犯人が被害者と顔見知りで一緒に話しながら歩いていた可能性もある。

 ホームレスが犯行を目撃していて、犯人から鞄を盗られそうになって抵抗したために銃撃されたという。かつてこういった事件は保険金の絡んだ事件が多かったが今回はどうであろうか。

 この事件で今年は日本人が5人殺されたが、どの事件も犯人は捕まっていないし、捜査そのものが行われているのかも分からない。金を出さないと動かないフィリピン警察は信用しない方が良い。

 2007年に同じマニラで34歳の日本人が路上で射殺された事件があって、それが先日一審の裁判結果が出た。珍しく逮捕、起訴された人物は現職警官で判決は無罪だったが、この事件も目撃者証言重視であやふやな所が多い。

 射殺された日本人も胡散臭い感じがあって、射殺時に載っていたバイクなどフィリピンでは珍しいカウリング付きレーサー・タイプで、観光客が乗るような代物ではない。この事件も一審裁判が終わって迷宮入りであろう。外国で殺されたら殺され損と思うしかない。
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author:cebushima, category:フィリピン事件帖 2010, 13:10
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フィリピン事件帖 2010 (24) 騙される方も悪いと思う詐欺事件
100ドル紙幣 フィリピン人は犯罪に対しては特別な才能があると思っている。特に『詐欺』に関しては人間の心理をついた巧妙な手で犯行を行う。

 最近世情をにぎわしているのに『催眠術強盗』がある。これは路上で巧みに接近した相手に対して催眠術をかけて被害者の家に乗り込み、現金や金目の物を被害者が何にも考えずに差し出す手口である。

 そんな馬鹿なことがあるかと思われるだろうが、最近でもマカティ市に住むフィリピン人女性が被害に遭って、現金5万ペソ(45千円)とパソコン、デジカメなどを盗られる事件が発生した。

 被害者は『車内で犯人の目を見て話している内に、いわれるままになってお金や所持品を渡してしまった』と語るが、へぇーと思うしかない。

 暴力的でない強盗だから多少の安心もするが、それにしてもどんな犯人か会ってみたい気もする。こういった事件を考えるとこの国では知らない人物には近づかないのが一番のようだ。

 今ひとつ面白い詐欺事件があった。これは『ブラック・ドル』詐欺というもので、黒い紙に特別な薬品をかけると100ドル札に化ける手口を取っている。

 タダの黒い紙がドル札に化けるなど普通の頭を持っていればあり得ないと思うが、小金を持つ欲の皮の突っ張った連中には効果的なようで、事件は頻発している。

 今回引っかかったのはマレイシア人で、同じホテルに泊まったソマリア人から声をかけられ、この犯罪話に投資と称したインチキに乗せられて36千ドル(本物)と90万ペソ(171万円)を渡した。

 このマレイシア人は黒い紙が100ドル紙幣に化ける手品をソマリア人から見せられて信じたのだろうが、仮にそれが使える紙幣に化けたとしても実際に使えると思ったところがおかしく、犯罪者としては同じ穴のムジナであり同情できない。

 ただし、このマレイシア人話がおかしいと気づいて警察に連絡し、ソマリア人は逮捕された。しかし、ソマリア人と組んでいたハイチ人が騙し取った金を持って雲隠れしたから金は戻っていない。

 それにしてもソマリア人といいハイチ人といいフィリピンでは少数で目立つ存在だが、それがまた詐欺を働けるめくらましになっているのだろう。

 詐欺とは違うが麻薬関連で西アフリカのグループがフィリピンを舞台に暗躍していて、そちらもフィリピンでは目立つが巧妙に国内を泳いでいるのであろう。

 こんな連中は入管記録から追えば、恐らく違法滞在者で分かるだろうがその気がないのがこの国の警察らしい。
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author:cebushima, category:フィリピン事件帖 2010, 18:58
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