- フィリピン・セブを中心とした時事便り (23) ラプラプ市で独居の日本人年金生活者が、殺害される
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2011.07.16 Saturday海外で殺害される日本人は多いが、その中でもフィリピンは目立ち、一時は『保険金詐欺』の舞台として有名な時期があった。
最近は保険会社も調査能力が向上し、フィリピン物件は以前のように保険金が下りなくなりこの線での殺人事件は減った。
反対に怨恨や偶発的な事件で殺害される例が多くなったが、ほとんどの事件が未解決、犯人逮捕、裁判まで持ち込めるのは稀である。
昨年のフィリピンで殺害された邦人は5人、これでも少ない年の方で、今年はどういう訳か年半ばを過ぎても邦人殺害事件の発生はなく、珍しいこともあると思っていた。
ところが7月11日、セブ市と2本の橋でつなぐラプラプ市で日本人が殺害された。ラプラプ市はマクタン島のほとんどを占める市域で人口は30万人位、成田−セブを結ぶ直行便が就航する国際空港を持ち、近くはリゾートとして有名である。近年、このラプラプ市を中心に老齢の日本人男性が住み着くこと多く、今回の被害者は本籍愛媛県の75歳だった。
借りていた家屋の2階寝室で遺体は発見されたが、首に電気コードが二重に巻かれていたため最初は自殺ではないかと警察は見た。しかし地元テレビ放送ではベッドに多量の血が流れていて、誰が見ても状況は『殺人』事件を伺わせた。
死因は首を強く圧迫されたための『窒息死』で、警察の見立てでは、被害者がベッド上に居る時、鈍器で顔面を殴り、その鈍器で首の前部を圧迫し死に至らしめ、首に巻かれたコードは犯行を隠し自殺に装うための偽装と見ている。
また事件当夜の9時頃に被害者宅の裏手で不審な男が目撃され、この男は被害者が住む家のそばの塀をよじ登っていたという。
なお、第一発見者は被害者宅に通いで働いていた25歳のメイドで、メイドによると11日夜は、夕食を作り、それを食べた被害者が2階に上がったのが最後の目撃で、メイドは午後6時半頃に玄関ドアの鍵をかけて被害者宅を離れたと証言している。
これから被害者が玄関の鍵を開けて人間を招き入れたことも考えられ、その場合、犯人は顔見知りの可能性が高い。ただし、財布や携帯電話などが見つかっていなくて、強盗の線も考えられている。
メイドが殺人事件第一発見者の例では、昨年ミンダナオ島サンボアンガ市でやはり年金暮らしの日本人男性が殺害されたが、この時も発見、通報者はメイドだった。
ただし、この事件、調べが進んでメイドが仕組んだ殺害事件と分かりメイドは逮捕された。フィリピンでは何か事件が起きると『インサイド・ジョブ』といって内部に居る者が一番怪しいと見られていて、こういった通報者が犯人だった例は結構多い。
日本で暮らせないといった理由などでフィリピンで年金暮らしをする日本人はほとんどが男性、若い女を囲って傲慢な日々を送る者もいて、これは日本だけではなく、欧米諸国の連中も同じことをやっているから一方的に責められるものではないが。
今回のラプラプの事件、老齢になって異国で殺されるとは、この被害者にも75年分の人生と係累があったはずで、いくら自分が選択したとはいえ無残極まりない。捜査能力は落ちるが、今はフィリピン警察の腕を信じる他なく犯人を一日でも早い検挙を願う。
- フィリピン・セブを中心とした時事便り (22) マクタンの橋から飛び込み自殺をしようとしたアメリカ人
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2011.06.21 Tuesday写真は国際空港のあるマクタン島とセブ島本島をつなぐ2本の橋を空から俯瞰したものになる。
手前が1973年開通の旧橋、向こう側が1999年開通の新橋で、どちらも日本のODA借款で架橋され向かって左側がセブ市内になる。
新橋では今年の1月にも塔の上に立て籠もった事件があり、近年飛び込み自殺の名所になりつつある。この橋の下は結構大きな客船が通過するから、橋から水面までかなりあって死亡する確率は高い。
6月20日、週明けの月曜日昼過ぎに、約15mある塔の頂上に登り、自殺を試みようとしたアメリカ人が保護された。
このアメリカ人、アラバマ州出身の50歳。アラバマで自動車工場や刑務所で働いた後、フィリピンに来たのは2年前で妻と離婚し娘がいる。
いくら金を持ってフィリピンに来たのかは分からないが、ラプラプ市内でレストラン・バーに共同経営者として25万ペソ(約50万円)を投資してオープン。ところが毎月の賃料が6万ペソ(12万円)もかかり、あえなく倒産、しかも滞在ヴィザは6ヶ月前に切れていた。
どうもバーを共同経営した相手側も質が悪かったようだが、こういったケースではたった25万ペソで美味い話に乗った方も悪い。いくらフィリピンでもそんなに美味しい話はないと思うべきだった。
このアメリカ人、ボクシングのパッキャオのコーチで有名なローチと似た顔をしているらしく、塔に登る前に橋の補修をしていたフィリピン人と写真を撮ったというから何となくおかしみがある。
さて、塔の頂上に登ってタバコを何本か吸っている内に、眼下の海面からあまりにも高いのに怖気づいて立ち往生し、通報でやって来た警官に説得され3時間後に保護された。
保護された時の所持金は90ペソ(約160円)という素寒貧ぶりで、保護した警察も同情して食事をさせる有様だった。
自殺の原因は金銭的困窮が第一になるが、この人物には愛人がいた。アメリカ人は歴史的背景もあってフィリピン人には一番好まれ、セブで独り者のアメリカ人はたいていガール・フレンド(愛人)を抱えているが、この男の場合、愛人は男だったという。
どういう経緯があったかは分からないが、この男の愛人に逃げられたことも自殺を試みた動機になっているようだ。保護した警察はこういった事情からこのアメリカ人を放免する考えを示しているが、イミグレーションの方は不法滞在で収監するというから簡単ではない。
今回はアメリカ人だったが、同じような事情を抱えた日本人は腐るほど居るから、そのうち日本人がこの橋から自殺をするのも出てくるのではないか。今回の事件は地元テレビで派手に取り上げられたが、どこかおかしみのある雰囲気を漂わせた報道だった。
- フィリピン・セブを中心とした時事便り (21) マクタン・セブ国際空港で麻薬運び屋の中国人カップル捕まる 》
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2011.03.04 Fridayセブの入り口、マクタン・セブ国際空港(MCIA)で中国人カップルが捕まった。
写真はそれを伝える地元の英字新聞で、一面をにぎにぎしく飾った。左の写真左から2番目に写る人物が54歳、その右隣りの女が27歳どちらも中国籍である。
この二人が夫婦かどうかは分からないが、3月2日、香港発セブ行の便に搭乗、午後4時半にMCIA到着。入国後機内預けの荷物を引き取った後、女がカスタムで係官に呼び止められ、ハンドバッグを開けるように指示された。
開けたら中から米ドル2万ドルが見つかった。フィリピンには米ドル1万ドル以上相当を持ち込む時はカスタムに申告する規定があって、違反した時は没収にはならないが取り返すには面倒臭い手続きが必要だし、下手をすると因縁を付けられてフィリピンの役人にネコババされてしまうこともある。
怪しい奴だと機内預けのバッグを調べたら、3kgの粉末状の物が見つかった。この中国人は食品用に使用するためといっていたが、調べたらエフェドリン=覚せい剤だった。
この空港のカスタムはチェックなどほとんどなく、おざなりに聞いて通過させるが、今回はどういう訳か摘発した。これはこの間、中国でフィリピン人麻薬運び屋に死刑判決を受けた事件と関連があるのかも知れない。
フィリピン外務省によると2006年以降で、中国で捕まり、起訴されたフィリピン人運び屋は226人、その内72人に執行猶予付きの死刑、38人が終身刑、78人が禁固15年の判決を下されている。
捕まる運び屋は氷山の一角だから中国―フィリピンを行き来した運び屋は何千人もいるだろう。その逆、中国人がフィリピンへ運ぶのも山ほどあるだろうし、中国人はフィリピンを麻薬製造の根拠地に置いていて、時々製造所が摘発される。
2月25日にも、首都圏で覚せい剤190Kg(末端価格9億5,000万ペソ=17億円以上)が押収されたが、これも中国人グループの仕業だった。フィリピンは中国と違って薬物犯罪で死刑になる恐れはなく、中国のギャング・グループには心置きなく活動できる場所になる。
この他、西アフリカ、ナイジェリア人とかカリブのハイチなどの薬物犯罪グループがフィリピンで捕まる。
この連中はフィリピン人を巧妙に誘って運び屋に仕立てているらしいが、その多くは交流サイトで釣り上げている。こんなものに引っかかるのかとは思うが『金』に釣られて運び屋をやっているのは間違いないし、一度やってしまえばあとは脅かされて一味に加担するようになる。
ナイジェリア人とかハイチ人などフィリピンでは目立つ風貌だから、片っ端から調べればヴィザで問題のある連中なのではないか。もっとも入管の連中がつるんでいるから無理な話か。
あまりにもフィリピン人運び屋が多くて政府も注意を喚起しているが、フィリピンのなくならない貧困と運び屋激増は関係がある。