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最近のニュースから 2015 その(3) 産経新聞のいう『言論の自由』と韓国・ソウルの裁判
 産経新聞は反中国、嫌韓を社是にしている新聞社で、今や『安倍自民党御用新聞』の名に変更して良いような自民党べったり。こういう論調の新聞社が大手新聞社に入っているとは日本もおかしな国と思うが、物事には左右の見方があり、産経を強く支持する層も日本にはかなり多いから経営が成り立つし、そこを特化した方が良いとの経営視点は巧妙である。

 産経の記事の作り方は、他の新聞社と較べると、見出しなど週刊誌顔負けで非常に上手く、内容もなるほどと思わせるように書いている。ただし、底に流れるのは『反朝日新聞』で、早くいえば朝日の逆を書いているのが特徴で、安直といえば安直だが転と恥じない所がこの新聞社の強味でもあり、この点が安倍の手腕、考え方と似ている。

 特に産経の中の別動隊ともいうべき『関西版』はここまで書くのかという内容で、それはそれなりに面白いが、言論人としての矜持は全くなく、こういうのが堂々と大手を振ってのさばれる日本は空恐ろしい時代になった。

 産経は反中、嫌韓を全面に出しているために中国、韓国関連の記事の作り方は他の新聞社を圧倒させる内容と陣容を構えていて、私など中韓に関連するニュースがあると産経で確認を取るくらいである。

写真は当日の産経電子版から

 その産経ソウル支局長が書いた記事を巡ってソウルで裁判があり、先頃判決が出た。この記事は
20144月に韓国西海岸でフェリーが沈没し、300人以上の死者・行方不明者が出た事件を扱っていて、産経ソウル支局長がその年の8月に書いた記事が問題となった。

 この海難事故は私もラオス・ヴィエンチャンの仮住まいだったゲスト・ハウスのテレビで見ていて『韓国はずいぶん悠長に救助活動をしているな』と感じた。事故は船の過重積載や船長以下乗組員が真っ先に逃げてしまうなど、運行会社の問題や政府側の不手際などが炙りだされ、韓国社会の抱える歪が出た事件として喧伝された。

 この海難事故を巡っては船長などが逮捕されて、殺人罪で裁かれ、先頃『無期懲役』の判決が出たが、この手の事故では少々厳しいのではと思うが、韓国の世論が黙っていなくてその意を汲んだ『政治的判決』となった。

 さて産経の記事だが、この記事は電子版に載って私も読んでいるが、記事そのものが韓国の新聞からの引用で、これといって大した内容ではない。ところが『空白の
7時間』と名付けられているように当時の朴大統領が事故発生後、明らかでなかった空白の時間があって、これをゴシップ的に大統領は男と逢っていたと憶測を韓国紙が書いた。

 産経支局長の方はこれを料理して軽い気持ちで掲載したのだろうが、韓国政府と産経は天敵ともいって良い関係で、この記事を重く見た。この点では産経の『オウン・ゴール』と見て良い。ただし韓国といえども、政府がジャーナリストを告発すると批判を招くので、民間団体という得体のしれない所から大統領への『名誉棄損』で告発させた。

 名誉棄損というのは毀損された本人から告発されるものと思っていたが、このようにトンネルを通じて出来ることを初めて知ったが、それを受けて韓国検察は支局長を起訴し、出国停止とし裁判は始まった。

 ジャーナリストを裁判にかけるというのは民主社会では相当な事になり、業界を始め内外から韓国に向けて強い批判が起きたし、日本でも裁判批判の声は高まった。支局長の出国停止処分はその後解除されたが、裁判は続き検察は
16ヶ月の懲役を求刑。

 12
17日、ソウル地方裁判所は『無罪』を言い渡し、記事を巡っての『名誉棄損』はないと結論付けたが、裁判は上級審に持ち込まれる可能性も残る。

 この判決について産経は鬼の首を獲ったように大々的に紙面で伝え、支局長(今は元になる)は英雄扱いになっているが、私に言わせればつまらない引用記事を書いて、言論の自由を持ち出すなどチャンチャラおかしく、産経ほど他のマスコミは騒いでいないのも事実。

 つまらない記事といえば以前、産経のシンガポール支局長の記事を読んで、どこかで読んだテーマとそっくり、文章もほとんど変わらないのに気付いた事があった。

 あまりにも似ていたので、この業界の記者に両方の記事を送って盗作ではないかと聞いたことがあった。その記者の判定は『微妙だが、一応盗作とはならない』だったが、事を荒立てたくない身内を庇う業界特有の体質が強いのでそういうことになったのではと思っている。

 今回の裁判で問題になった名誉棄損だがなかなか難しい項目で、権力者が批判を封じ込めるためにこの手で裁判を起こすことが多く、フィリピンでも前大統領の夫がこの手を使ってマスコミを名誉棄損で告訴連発。

 この夫は弁護士で腕も良いが、こうやって裁判沙汰になるのを恐れてマスコミも自主規制が生じて、権力側の思う壺となっている。そういえば大阪の橋下前市長が先頃『名誉棄損でバンバン提訴する』と、マスコミ向けに睨みを効かせたが、これは批判を封殺する考えと全く同じ根で、こういう人物に人気があるというのは日本人もどうかしている。

 さて、産経に戻るが、産経のいう『言論の自由』は広義な意味でずれているのは確かで、朝日新聞の『捏造』と産経が執拗に追及する『強制慰安婦』問題では、朝日は記事の誤りを認めて謝罪したが、今回の場合裁判では引用した記事とはいえ、記事が不正確であった事は確かで、その点を産経は釈明するべきではないか。

 新聞は『社会の木鐸』とは良く聞く言葉だが、産経のように安倍自民党の手下になっているようでは、この警句に反しているのではないか。と、こういうことを書いていると産経新聞は名誉が傷付けられたとこの文を書いた人物を提訴するなどと、漫画みたいな事を考えるが、こんな極小の文など相手にしないか。


 
author:cebushima, category:最近のニュースから 2015, 19:40
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最近のニュースから 2015 その(2) 居酒屋チェーン『ワタミ』の罪と罰


 日本へ行くと以前は居酒屋へ足を運んだが、最近は行かない。その理由は禁煙の居酒屋というのがなくて、店の入り口で『ここは禁煙か?』と聞いたら、店の人間が化け物でも見る様な顔をした体験があり、酒を呑む所は『煙草』を吸うのは当たり前というこの業界の態度に呆れたからである。

 それでも、小料理屋という規模の店主が旬の肴を作って出す店には魅力はあるし、家人もこの手の店を好む。今は、居酒屋もチェーン化されていて今回書き連ねる『ワタミ』もこの手では最大チェーンである。このワタミが民事裁判で従業員の過労死を巡って遺族から提訴され争っていたが、
128日、東京地裁で『和解』へと至った。

 この事件は
20084月にワタミの居酒屋チェーン店に就職し、その2ヶ月後に過労のために自死した26歳女性を巡っての係争で、2012年にワタミでの異常な勤務形態による原因として『労災』は認定された。認定まで4年もかかっているのは、一度は労働基準局の判定が認めらず、その上級の審査で認められたためで、当時の労働基準局の人間はどちらの味方なのかとに責められて良い。

 労災を認める過程で明らかになったのは、ワタミの滅茶苦茶な残業時間で、通常
1ヶ月100時間を超える残業で死亡した場合、労災を認めるらしいがこの自死した女性は140時間も残業があった。しかも、深夜に及ぶ勤務のため閉店後は始発電車が出るまで店に居なければならないなどの実態や、また、研修と称して勤務時間外に呼び寄せたり数々の会社側の不当行為が明らかになった。

 特に自死した女性が残した自筆のメモには『体が痛いです 体が辛いです……誰か助けて下さい』と
6行の訴えがあり、ギリギリまでワタミによって追い込まれていたことが分かる。

 労災審決が出る前の
2011年には創業者の渡邊美樹は民主党推薦で東京都知事選に立候補して、3位で落選。それにしても従業員の労災を巡って紛糾していた会社のオーナーを担ぐとは民主党も焼きが回っている傍証で、ようやく握った政権の座を手放してしまう駄目な体質が良く分かる。

 さて労災認定後に遺族側は謝罪などを求めて協議を持ったがワタミは一切責任を認めず、結局遺族側は民事訴訟に持ち込む。渡邊は若手の起業家として当時は相当もてはやされたようで、
2013年には自民党から参議院選比例区に出馬、下位で当選。本人にしてみれば赤絨毯を踏めればどこの党でも良かったのだろう。

 しかしながら『天網恢恢疎にして漏らさず』という言葉があるように、渡邊の言動は自死した遺族に対して人間性を疑われることが多く、折からの『ブラック企業』問題の槍玉に挙げられブラック企業の大賞までもらう始末。

 ワタミは渡邊が一から作り上げた企業で、東証
1部上場、2015年度の総売り上げは1550億円以上でいわゆる日銭が毎日4億円以上も入るから、たかが居酒屋チェーンとは馬鹿にしてはいけない。もっとも、ワタミというのは風を読むのが上手い会社で、介護事業や様々な事業に手を出していて、居酒屋やレストランで名前をあれこれ変えた傘下の店はたくさんあるから、ワタミの名前でないからと店に入ったらワタミの店だったいうケースは多い。

 民事裁判ではワタミも渡邊もかなり強気だったが、会社は
2年続きの100数十億を超す大赤字で、評判は下落する一方。そこで、裁判で争って評判を落とすよりは和解で金を払った方が得策と割り切ったのか、一転して和解交渉に入った。

 その和解成立の額は
13千万円を支払い、その他死を無駄にさせないために労働改善条項などが盛り込まれ、原告側の全面勝利だった。もっとも和解というと双方が歩み寄って決めたように見えるが、この面で詳しい人に言わせると、和解案というのは裁判所が提示することが多く、これに従わないと裁判を続け判決を待つことになるが、この判決は裁判長の出した和解案とほぼ同じになるらしく、ワタミ側も判決で騒がれるより、聞こえの良い和解に従わざるを得なかったという。

 実際、和解金額には慰謝料
4千万が含まれていて、これはこの手の裁判では異例な額で、裁判所も相当ワタミに対しては心証は悪かったのではないか。この結果、渡邊は謝罪を述べているらしいが、衣の下はどう考えているか分からず、議員職に影響が出てはまずいと思って仕方なく頭を下げたと見て良い。

 ワタミは社員数
6500人を擁するが、アルバイトが15千人もいる企業で、この手の飲食業の典型的な労使形態だが、労働組合は勿論ない。ちなみに日本で従業員1000人以上の会社の45%は組合を持つが、1000人未満ではたった5.5%しか組合がないというから、日本の底辺を支える中小、零細企業は組合など全くない環境に置かれていると言って良い。

 ワタミの悲劇も組合さえあったらブラック企業などと呼ばれないと思うがどうだろうか。

 最後に、私の働き盛りの時は残業
100時間どころかその倍もやっていた時期があったし、パワハラなど当たり前だった。それでも仕事を続けられたのは会社に『就社』ではなく好きな職業の道に『就職』したからだった。

 それにしても残業は良くなく、残業を強いる会社や上司は最低だと思える時代に早くなって欲しく、上司は
5時になったらさっさと帰るようにしないといけない。

 【写真はコールセンターなどが集まるセブのビジネス地区】


 
author:cebushima, category:最近のニュースから 2015, 21:10
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最近のニュースから 2015 その(1) 不妊治療のうま味と脱税

 2015
年も12月になって今年も残すところ幾つと指を折るような時期に始める『最近のニュースから 2015』。セブ島工房なりの内外のニュースを料理してお届けしたい。



 122日、東京地検特捜部が脱税の疑いで医療コーディネート会社『メディブリッジ』という会社の経営者41歳を逮捕した。

 医療コーディネートという言葉自体は聞きなれないが、この会社、子どもの欲しい夫婦を相手に代理出産や卵子提供者を紹介し、それも海外の医療機関を斡旋していた。

 この会社のホームページを見ると確かにそういった業務をする企業で、今までに700例以上を手掛けている。

 特捜部が関わるというのは相当な事案だと思うが、その脱税額は売上額11800万円の内の、法人税のたった3200万円。こんな少額で天下の東京地検特捜部が動くのも変な感じはするが、現代の暗い裏面が表に出たことは確かである。

 同社でかかる治療費は『339万円+航空券代や宿泊費』とされているが、治療を行う場所がアメリカ・ハワイ、タイ、インドとあって、恐らく500万くらいは支払うようになっているのではと思える。

 500
万でも普通の夫婦では負担するには大変だが、アメリカでやると1500
万円くらいかかるという話もあるから、安くできると宣伝していたのであろうか。


 子どものできない夫婦は10組に1組はいるらしく、様々な要因から子どもを欲しがる夫婦が世の中に居る事も事実で、このため『生殖医療』が発達したが、それでも金が無いと出来ない治療で、子どもを持つのにも『格差』が歴然とある。

 当然、ビジネス・チャンスと見て有象無象の輩が参入し、今回のような摘発される会社も出てきた。

 同社のようなしょせん情報だけで動いている会社にも関わらず、社員は10数人抱えているというから、相当な経費はかかり、単純に500万円×700組としたら、今までの売り上げは35億円に達するから小企業とはいえない額になる。

 同社がタイやインドで治療を行うのは、現地の医療費が安い事と、日本と違って法律的に安直である事、卵子提供者が簡単にあるなどから来ているが、これで思い出すのは今年だったか、タイ人に自分の子どもを多数代理出産をさせ、摘発された日本人の事件があった。

 そのくらいタイは安直で金さえ払えばこの手は簡単だった。だったと書くのはその後タイ政府はこういった問題を防ぐために外国人の代理出産には制限する法律を作ったようだが、いくらでも金さえ払えば出来るのがまたタイであり、摘発された会社が相変わらずタイという場所を掲載しているのもその証拠になる。

 注目するのはインドだが、インドもこの手の技術は進んでいるし安くできるから注目の国になり、インド人提供の卵子では相貌がタミール風になるのではとのつまらぬ指摘があるが、その辺りは現地留学や住んでいる日本人から提供してもらうらしく、これはハワイも同じようだ。

 摘発された会社のホームページにはインドのスラムで慈善活動をしている記載もあるが、それがこの手のいかがわしい会社の常套手段で、そういった活動をしていると目をくらますのが目的で、フィリピンで怪しげな日本人の会社にもスラム地区に援助しているなど装った例は多い。

 それにしてもそうまでして子どもを欲しいのかという気がしないでもないが、人間の弱みにつけ込む商売は色々あって、国際結婚を紹介する連中などその最たるもので、インターネット上にはその手の情報が溢れていて、余程商売になるのだろうと思い、こういう汗を流さずして利を得るのはまともな活動、会社といえない。




 
author:cebushima, category:最近のニュースから 2015, 18:01
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